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□いちわめ
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もう太陽がてっぺんまで昇っている。おかしい。
ぶらぶらと散歩をしてみたはいいものの、目当ての親友がいない。

「しょうがない…」

呟いて、少し早足。俺の親友はこんな時、必ず部屋で寝ているのだ。この間は夜まで寝てしまった彼に一晩中デュエルにつれ回された。
デュエルなら一人だって出来る、そう思って俺の必要性を尋ねた事があった。アイツはいつもタッグデュエルを要求してきた。普通のデュエルに慣れている俺から見れば不思議な行動だった。アイツはその逆だった。シングルデュエルは性に合わない、いたってシンプルな答え。
一晩中つれ回された結果、翌日俺はジャックのコートに機械油をぶちまけ、そこらへんにあったクロウのバンダナそれを拭うという大失態を冒してしまった。
二人には怒られるどころか無理矢理寝かしつけられた。ブルーノには調子が悪いのではないかと機械油を射されそうになった。もう死んでもアイツの徹夜デュエルには付き合わないと心から決めた。俺の平和の為に。
無機質な銀色のドアノブに手をかける。
がちゃり、と音をたてて扉が開く。いつもの如く鍵はかかっていない。
予想通りだ、そう思いながら声もかけずにずかずか入る。どうせ声をかけたって小波は寝ているのだろう、そう思って。

「え?」
「…よっ!!」

小波におおい被さる俺と小波以外の人間。反射的にそいつにつかみかかる。
掴みかかって、それから投げようとして…おかしい。
俺の足が地についてない。天井の照明がダイレクトに目にかかる。
走馬灯、鈍い音と共に火花が散ったような錯覚。
破天荒な先輩との再開だった

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