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□百本のバラ
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お洒落なタイル張りな町の中をつい最近買い換えたばっかの赤いジャケットで闊歩する。
どうやら近頃赤いモノが流行っているらしく俺の格好は昔に比べて全然人の目をひかなくなった。
人混みを縫うように走る。待ち合わせの場所に近づくにつれ騒がしくなる。
喧騒の中、俺の吐く息は白い。とっくに約束の時間は過ぎていた。

さあ、どうやって謝ろうか…

ってな事考えてたら人混みの中で誰かに服の裾を引かれる感覚。
いつの間にか俺は流れの端に追いやられて立ち止まっていたらしい。
目の前にいたのは年端もいかない女の子。
手にもったのは花のない花束。

「これ、買ってください」

あまり綺麗と言えた格好ではないその少女は俺の目じっと見て返事を待つ。
俺に差し出してきた花束(草の束?)以外は何も持っていない。これを売ればきっと最後なのだろう。
少女に提示された通りの値段とポケットに入っていた飴とを一緒に渡す。
にこり、微笑んだその少女は俺に花束を渡すと人混みの中に消えていった。

「まあ、人助けの為なら安いもんだよな。」

草だけにしてはやけに割高なその花束を見ながら苦笑すると自分も人の流れのなかに戻った。
自分が立ち止っていた場所から目的の場所はどうやら相当近かったらしく、すぐに目印の大きな針葉樹が見えた。

「…遅い」
「いや、マジごめん。」

待ち合わせに十分以上遅れてきた俺に小波が不機嫌そうに言う。
"いろいろあったんだよ"世界中旅をしてすっかり身についてしまった大きな身振り手振りで説明しようとする。
持ち上げようとした右手が重い。確かさっき買った花束もどきがあったはずだ。
小波が一点を凝視して固まる。つられて俺も視線を移す。俺の右手だ。
いや、これは正直俺もびっくりした。視線を小波に戻すと先までの不機嫌そうだった顔は伏せられていて顔も真っ赤。

「いや、お前大胆すぎんだろ…」

"恥ずかしいとかそうゆーのないの?"
付け加えて言った小波の顔はまだ火照ったままだった。



百本のバラ
(花束という名の超ハイテクフラワー)



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フライングクリスマス十こな
TFの花束超ハイテクだよねって話です。

読み返してみたらさほどクリスマスでもないっていう…

もとはくしゅです!!

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