長編夢その2-休暇編
□第5幕 マルフォイ家へ(前編)
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『で、どうする、おまえんとこの女たらしの父親対策?』
『ねえ、もうちょっとオブラートに包んで言ってお願い…。』
『女好きのおまえのパパの魔の手から、どうやって緋色を守る?』
『ほぼ言い方変わってないけど、話を進めよう。とりあえず、緋色は美人だから、尚更危ないんだよな。』
『おまけに、東洋系だからなんだっけ、異国風?目立つもんな。』
『エキゾチックって言いたかったんだろうけど、
まあ、確かに…。少しでも、目立たないようにしてもらわないと。』
『それ、結構難しいよ;うーん…ズボン履いてきてもらうとか?』
『ぴったりしたジーンズとかだと逆に危ないけどな。
でもまあ、ズボンなら少なくともスカートより脱がせにくいし、いいかも。』
『脱が…!?なあ、段々おまえのパパが恐ろしくなってきたんだけど。
アズカバンに行ってもらった方がよくない?』
『正論だけど、ダメだ。』
『正論なんだ…。』
『とにかく、緋色から1秒たりとも目を離さないことが肝心なんだよ。
父上と一瞬でも2人きりにしたら食われる。確実に。』
『おまえんちって化け物屋敷?』
『失礼なこと言うな。狼が一匹いるだけだよ。』
『同じだろ!赤ずきんちゃんが食われたら、もれなく僕らの命も消えちゃうよ!』
『確かに…。うーん、猟師がいるよな。』
『あっ!じゃあ、スネイプ同伴で行くとか?』
『それ最終手段だろ!;スネイプ先生、父上が何かする前から、問答無用で攻撃しそうだもの!』
『だよね;』
それに、自分で言っておいてなんだが、友達の家に遊びに行くのにスネイプ同伴は嫌だ。
眉間にしわを寄せた物騒な黒づくめの魔法薬学教授のことを思い出し、ロンはがくりと肩を落とした。
とりあえず、魔法薬学の課題だけは、ドラコの家に行くまでに終わらせておこう。
『結局、僕らが緋色に張り付いておくって対策しかできないな。』
『それで大丈夫じゃね?
緋色、あちこち駆け回ったりするタイプでもないじゃん。クイディッチ絡みでもない限り。』
『それはそうだけど、うちの広さなめるなよ。
あと、古いからホグワーツほどじゃないけど、抜け道とか隠し部屋もどっさりあるし。』
『何それ、超面白そう!』
『おまえの方がはしゃいで、はぐれるなよ!?迷子になっても、絶対探してやらないからな!』
『この冷血漢!』
『よし、つついてやれ。』
「Σいてっ!;」
間髪いれず、がつん!とワシミミズに頭を突かれ、ロンは慌てて羽ペンを放り出して頭を庇った。
タイミング良すぎじゃないだろうか。
こいつ、字が読めるの!?という思いで、
いつの間にやら、ベッドのヘッドフレームに留まっていたワシミミズクを睨めば、
生意気なミミズクはかちりと嘴を鳴らすと、そっぽを向いて羽を整え始めた。
飼い主と一緒でほんと可愛げないなとブツブツ言いながら、ロンは再び羽ペンを持つ。
『わかったよ、とにかく緋色から離れなきゃいいんだろ?両側から手でも繋いでおけばいいじゃん。』
『それ、僕らがスネイプ先生に恨まれないかな?』
『…そこまで、心が狭くないだろ、たぶん。』
『緋色が絡んでるのに?』
『………両側にいるだけにしようか。』
『それがいいと思う。』
手をつなぐのは危ないという結論に達し、結局緋色を両サイドで挟んで移動することに決まった。
そして、緋色って方向音痴というわけでもなかったよなと色々と想いを巡らせているうちに、
ロンは、はたと素晴らしくいいことを思いついた。
「そうだよ、グッドタイミング!パパが昨日買ってきてたよな…。」
ロンは、ガバッとベッドから飛び起きた。
父親のアーサー・ウィーズリーは、マグル製品をこよなく愛しており、
週末になると、用途もよくわからないものを、どっさりとノミ市のようなところで仕入れてくる。
それを納屋いっぱいに貯め込んでいるので、モリーからは常々叱り飛ばされていたが、
つい先日、父親が買い込んできたものの中に、興味深いものがあったのをロンは確認していた。
「えーっと…。」
早速、納屋へ行こうと部屋を飛び出しかけて思いとどまり、
ロンは先に羽ペンを手に取ったのだが、生憎魔法の羊皮紙は余白がなくなっていた。
仕方なく、普通の羊皮紙に手紙を書いて、
すでに帰りかけていたミミズクを捕まえ、突かれながらもその足に手紙を括りつけ、納屋へ向かい…と、
ロン・ウィーズリー少年は、友人の為に忙しく休暇の数日を準備に費やしたのだった。