長編夢その2-休暇編
□第7幕 プレゼントとその被害
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一方、緋色の隣の部屋と言えば、もちろんセブルス・スネイプの部屋であり、
スネイプは緋色ほど寝起きは良くなかったが、同じくらい早起きだったので、すでに起きていた。
むしろ、いつもより早く起きていた。
隣室の早起きの少女が、早朝こっそり置いたプレゼントを見つけて、
驚いてスネイプのところを訪ねてくるのでは…と思っていたからだ。
(箒のプレゼントも、やり過ぎだっただろうか。)
入学祝にはミミズク、そして今度は箒である。
紅茶を淹れながら、今更そんなことを考えていたが、スネイプはそれくらいいいじゃないかと、
あまり使い道のない自分の金庫のことを思って、誰にともなく肩をすくめた。時。
「スネイプ先生ーーー!!!」
「Σ!?;」
緋色が朝一で訪ねてくるのでは、驚いているのでは。
その程度は予想していたものの、全く予想していなかったほどの大声で名前を呼ばれて、
スネイプは思わず、飲んでいた紅茶を吹き出してしまった。
「げほっ!!;;ごほっ、なっ…。」
「スネイプ先生!!!」
「ど、どうした!?」
駆け込んできたのは、もちろん緋色だったが、少女はまだ寝巻姿だった。
いや、寝巻なのだろうか、えらくサイズの大きなシャツ1枚という恰好。
スネイプは、そこから伸びるまだ成長期前の少女らしいほっそりした白い足に一瞬目を奪われてから、
思い切り、上に目を逸らした。
しまった、天井しか見えん。
「スネイプ先生!!!」
「ま、待て、落ち着きなさい、緋色。とりあえず、その恰好は?」
「?あっ、これ寝巻です!」
「我輩のシャツに見えるんだが。」
「大丈夫です、スネイプ先生のシャツは勿体なくて寝巻になんてできなかったので、
これは同じサイズのものを買って、寝巻にしてるんです!」
「全く大丈夫に思えんが、なるほどわかった。」
そういえば、以前まだ緋色は身一つでホグワーツに保護されていた時、
貸していたシャツが新品に買い代えられて返ってきていたなと思いだす。
しかし、今はそれより、興奮しすぎている少女を落ち着かせる事だ。
「スネイプ先生、大変なんです、ベッドの箒が!いやあの、ベッドに箒が!
名前通り、蜃気楼でしょうか!?でも、触れてるんですけど!これ!」
落ち着かせるなんて無理だった。
今にも逃げ出すと思っている様に、両手でがっしり箒の柄を握りしめ、
少女はマシンガンのように喋りつつ、表情はどこか途方に暮れたような顔をしている。
スネイプは一瞬、どうしたもんかと額に手を当てて考え込んだが、
情報を一気に与えて、部屋に戻して消化させるのが無難では…という結論に達した。