長編夢その2-休暇編

□第2幕 ダイアゴン横町へ
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 「ふんふんふーん…。」





微かな上機嫌らしい鼻歌が聞こえてくるのは、ホグワーツの地下。


魔の巣窟なんて冗談交じりに恐れられている魔法薬学教授の私室の隣に、
学期中はなかったはずのドアが出現しており、細い鼻歌はその中から聞こえていた。



中では、その部屋の主、朱雀大路 緋色が早朝からすでに起き出し、
機嫌よく顔を洗って、着替えを済ませているところだった。


長期休暇中なので、制服を着るわけではなかったが、
緋色は年頃の少女ながら、あまり着るものに頓着しない。


ので、持っている少ない衣類の中から、お気に入りの組み合わせ、
ジーンズに黒シャツと言う、いつも通りの恰好をしていた。





 「よーし!今日はスネイプ先生とお買い物だし、箒はやめておこうかな。」





綺麗に髪を梳かすと、緋色は窓から初夏らしい晴天の空を見上げたが、
本日の楽しみすぎるイベントを思い出し、気を落ち着けるためにも朝食の前に課題を進めることにした。


手始めに、好きな魔法薬学と魔法史から、もうかなり進めており、
緋色は、いそいそと魔法薬学の教科書を手に取った…のだが。





 「…ん?」





不意に、バサバサと羽音がし、緋色は目を瞬かせて顔を上げた。


ハイドが遅めの散歩から戻ってきたのだろうと思ったのだが、
がんがんと嘴で窓を突かれ顔を向ければ、窓の外で羽ばたいていたのは、見慣れない森フクロウだった。





 「え、あれ、お届けもの?」




慌てて立ち上がって、フクロウを中に入れる。


フクロウの首元には、何やらバッジのようなものがついていて、
それが、ホグズミードにも支局のあるフクロウ郵便局のマークだと緋色は思い出した。




 「えっと、スネイプ先生に?」


 「ホー!」


 「え、私?」




そんなわけないでしょみたいに鳴かれ、
緋色は確かにスネイプ先生宛てなら、普通にスネイプのところへ直接届けるだろうなと笑ってしまう。





 「ごめんね、ありがとう。」




礼を言って、ハイド用のクッキーを1枚あげてから、緋色はフクロウを窓から見送った。


フクロウが置いて行ったのは、レポートで使う羊皮紙くらいの大きさの封筒で、
差出人は、ドラコ・マルフォイ…と後から書き足したようにロンの名前も書いてある。





 「?」





はて、どっちからだろう。


2人が一緒に出したわけもないだろうし、
名前の書き方からして、ドラコからロンを経由して届いたようにも見える。


緋色が首を傾げながらも中を開けると、出てきたのは、
いつもドラコにもらっていたクイディッチ雑誌、Weekly Quiddich Postの最新号だった。
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