長編夢その2-休暇編
□第3幕 ウィーズリー家へ(前編)
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― かつかつかつ…。
長期休暇に入り、人気のないホグワーツの城の中に1人分のヒールの足音が大きく響く。
現在、早朝で割合涼しい空気の中、ホグワーツの中を歩いていたのは、
ここの副校長、ミネルバ・マクゴナガル教授だった。
休暇中も仕事かと言われると、副校長なのでそういう時もあったが、
通常は、生徒と同じように休みの日が多い。
本日は仕事でもなく、マクゴナガル教授はこのホグワーツに、
長期休暇中も特別措置で残っている自分の寮の生徒の様子を見に来たのだった。
(まあ、たぶんセブルスも一緒だから、大丈夫でしょうけどね。)
敵寮とも言える、あまり仲のよくない寮監の男性教諭に懐いている少女の事を思い出しつつ、
マクゴナガルは、いつものきびきびした動作で地下へ向かっていた。
朱雀大路 緋色。
特殊すぎる事情で出迎えてくれる家族もなく、
セブルス・スネイプと共に、このホグワーツに残っている少女だ。
ひどくスネイプに懐いているので、
スネイプと2人なら、たぶん、気落ちしたりしていないだろうと思いつつも、
休暇が始まって丁度1週間経ったので、念のため様子を見に来てみた次第。
起きているだろうかと一瞬思ったが、あの少女のことなので、
スネイプと共に早起きしているだろうと思い直し、地下への階段を下りた…ところで、
マクゴナガルは、その問題の人物たちと鉢合わせしてしまった。
「………。」
「………。」
驚いたような顔のセブルス・スネイプの顔に出くわし、
マクゴナガルもまた目の前の光景に、挨拶しようとした言葉を迷子にさせてしまう。
両者無言で、たっぷり1分ほど経過したのち、
マクゴナガルは目を擦りたいのを抑えながら、真っ先に聞いてみた。
「えー……おはようございます、セブルス。それで、どういう状況ですか、それは。」
どういう状況とは、問題の少女、朱雀大路 緋色をスネイプが抱きかかえていることであり、
何やら、ずーんと落ち込んでいるらしい少女が、
しっかりとスネイプに抱きついていることを指し示している。
スネイプの方では、誰もいないはずのホグワーツで足音がするので怪訝に思っていたが、
マクゴナガルと鉢合わせするとも思っておらず、こちらも困惑して、あーと言葉を濁していた。