長編夢その2-休暇編

□第5幕 マルフォイ家へ(前編)
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雲一つない快晴の空、がんがん照りつける夏の日差し。


そんな中、好き好んで外にいたいという人間もあまりいないだろう。

それは、フクロウやミミズクたちにとっても同じ事だ。

暑い日だけでなく、基本的に昼に飛ぶのも好きではないのだが、
魔法使いは手紙の配達に、好んでフクロウを使う。


そのため、元々フクロウたちは夜行性ながら、昼の飛行に慣れているものがほとんどだった。



が、やはり夏の空の下を頻繁に行きしたいはずもない。


彼らが人間の言葉を喋れたなら、暑い、眠い、ほんと働きたくない…と愚痴がこぼれてきたかもしれない。

しかしながら、そのマルフォイ家のワシミミズクは飼い主に似たのか、ひどくプライドが高く、
プロ意識もあったので、文句も言わずに、頻繁に手紙を携えて往復していた。



…マルフォイ邸のドラコの部屋と隠れ穴のロンの部屋を。



で、その手紙は、毎回ほぼ同じ出だしで始まった。






 『課題の進み具合は?』





呪文がかけられた特殊な1枚の羊皮紙。


その羊皮紙はペアになっており、同じく揃いの羽ペンで書き込めば、
余白があるかぎり、じわりじわりと双方に書き込みが浮かんでくる。


会話が続き、余白がなくなると、再びマルフォイ家のワシミミズクがどこか不機嫌そうな顔をしながらも、
つんと澄まして、次の白紙の呪文漬け羊皮紙を携えて来るのである。



ともあれ、まだ余白はたっぷりある。

課題の進み具合はと一番に聞く羊皮紙を受け取ったロン・ウィーズリー少年は、
段々見慣れてきたでかいワシミミズクに水をやりながら、早速もらった揃いの羽ペンで応答した。





 『まあまあ。』





たぶん、こんな答えじゃ誤魔化されないだろうなーと思いつつ、ダメもとで書いてみる。

すぐに、返答が浮かんだ。





 『具体的に言わないなら、まだそこにいるうちのミミズクに頭をつつかせるぞ。』





ゆらゆらとそんな脅し文句が浮かんできて、ロンが思わず羊皮紙から顔を上げてみれば、
どこか飼い主にも似た顔つきのワシミミズクは、脅すようにカチカチとその立派な嘴を鳴らして見せた。





 「おまえ、やな奴だな。」


 「ホー。」





ロンがしかめ面をしてやれば、煩いよみたいに鳴いたワシミミズは澄まし顔で、また嘴を鳴らした。


このままではマジで突かれると悟り、ロンはため息をつくと、
ごろりとベッドの上で体を転がし、その辺に散らばっていた教科書を手に取った。

ぺらぺらページをめくり、進行具合を思い出す。





 『ええと、魔法史のレポートと薬草学のプリントは終わった。天文学は、あと半分。』


 『魔法薬学と変身術は?』


 『Uh-huh?』


 『おいこら。』


 『なあ、それより本題!緋色の話だろ?』


 『…わかったよ。でも、課題はちゃんとやれよ!』





マズイ方向に話が向かい始めたので、慌てて、そもそもの目的を持ちだした。


こんな話し合いができる方法をドラコが持ちだしてきたのも、
元は共通の友人、朱雀大路 緋色のことを話し合うためだったはずだ。


課題よりそっちが大事だろ!と暗に言えば、今回は向こうに引け目があるので、ドラコも渋々同意する。
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