長編夢その2-休暇編
□第6幕 マルフォイ家へ(後編)
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「こことここが応接間。こっちがお茶会用のティールームで、そっちがお客用の図書室。」
「お客用の図書室?;」
「いくつ図書室があるんだよ。」
「え、3つ。お客用の図書室に禁書とか置けないだろ。あと、こっちからこっちまでが客間。」
「1、2、3、4…。」
「おい、やめるんだ、緋色。数えるな。」
晴天の夏の日、太陽がぎらぎら照りつける中。
朱雀大路 緋色とロン・ウィーズリーは、
しんとした涼しい空気のマルフォイ邸の屋敷を、ドラコの案内でぶらぶらと回っているところだった。
しかしながら、案内しつつ部屋の説明をしてくれるドラコに、緋色もロンもつっこむところしかない。
「こっちの2部屋がレストルーム。」
「…ねえ、ロン。レストルームと居間と何が違うの?」
「僕に聞かないでよ、緋色。」
「このフロアのこっち側は全部、母上のガーデニング部屋。」
「Σ室内に!?」
「Σしかも、3階に!?」
ていうか、こっち側全部!?と仲良く声を揃えて叫んだ緋色とロンに、ドラコは、うんと普通に頷いた。
貴族って……というのが、緋色とロンのいち早い感想である。
緋色が元いた場所には貴族なんていなかったし、本の中の存在だった。
ロンにしても、純血貴族の友人なんてドラコが初なので、
初めてその生活ぶりや屋敷を目の当たりにすると、もう、えー…としか言えない。
「もうこれ、僕らがどっかの1部屋にこっそり住んでたって、絶対わかんないよな。」
「うん、絶対見つからないと思う。スネイプ先生と一緒に引っ越してこようかな。」
「なんで、スネイプ先生と一緒に…;
それに、見つからないわけないだろ。しもべ妖精が、いつもせっせと掃除してるし。」
呆れたようなドラコの言葉に、しもべ妖精って個人宅にもいるんだぁと緋色は感心した。
まあ、確かにしもべ妖精でもいないと、
こんな広い屋敷の中を、こんな綺麗な状態で保っておくのは不可能だろう。
そんなことを考えながら、毛足の長い絨毯が敷き詰められた廊下を進む。
緋色にしてみれば、3人横に並んで楽に通れる廊下という時点ですごい。
「ここから上は父上たちの部屋もあるから、案内できないんだ。僕の部屋に行くか?」
「わ、見たい見たい!」
「行く!!」
「おい。なんで、おまえはそんなに張り切ってるんだ?」
「なんか、恥ずかしいものとか探す!」
「よし、おまえはここに置き去りにする。」
一生彷徨ってろなんて言われ、この広さじゃ一生はないまでも、
1日くらいは迷子になってもおかしくないと、ロンは慌ててドラコと緋色の後に続いた。
ドラコの部屋は、3階の一番手前にあるらしい。
逆に、一番奥がルシウス達の部屋なのだそうだ。
ドラコにちらっと目線を送られ、ロンははっとして慌てて緋色の隣をがっちり固めた。
(そ、そっか、この辺が一番危ないのか。)
今回の最重要任務、
緋色をルシウス・マルフォイの魔の手から死守するというミッションを完遂させるためには、気は抜けない。
こんなところで、少し目を離したすきに、ちょいと緋色を浚われて部屋に連れ込まれたら一巻の終わりだ。