長編夢その2-休暇編
□第7幕 プレゼントとその被害
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朱雀大路 緋色の朝は早く、寝起きはそれなりによい。
寝ぼけて、ベッドから落ちるなんてベタなこともなかったし、
うっかり二度寝してしまうなんてことも、ほとんどなかった。
それは休暇中であっても同じ…なはず、だったのだが。
「……………。」
その日本人の少女は現在、いつも通りすんなり目を覚ました後、
ベッドの上に状態を起こした状態で、身動き一つせずに固まっていた。
なぜなら、自分はまだ寝ているか、寝ぼけているに違いないと思っていたからである。
なぜ、そんなことを思ったかと言えば、目の前に真新しいピカピカの新品の箒がベッドに立て掛けてあったからだ。
「……………。」
緋色は目を落として、もう一度こしこしと目を擦ってみた。
それから、ゆっくりと顔を上げて見る。
…やはり、箒はまだそこに存在していた。
(……現実?)
いやしかし、なんで新品の箒が緋色のベッドの横に存在しているのか。
やはり、夢だろう。
そう思った緋色は、恐る恐るベッドの上に膝をついて起き上がると、
まるで、今にも飛びかかってくる蛇でも相手にしているかのごとく、慎重にそろそろと手を伸ばしてみた。
ちょい…とつついてみる。
箒は飛びかかってはこなかったが、確かに存在していて、手で触れられた。
ついでに言うと、ちょっとつついただけだが、白木の滑らかな手触りが素晴らしい。
白木は、箒に使われるのは珍しい材質だ。
緋色の知る中で、白木が使われている箒は一つしかない。
「…………。」
夢ではないらしい…とそれがわかると、
今度は今にも箒が消えてしまうとばかりに、少女はガッ!!と箒を掴むと、そのままベッドを飛び降り、
ばーん!と部屋のドアを開けて転がるように廊下を出、隣の部屋を目指した。