長編夢その2-休暇編
□第8幕 新学期のお買い物(前編)
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― こんこん。
長期休暇も、そろそろ終わりにさしかかるある日。
ウィーズリー家、隠れ穴のドアが軽くノックされ、
キッチンで新聞を読んでいたアーサー・ウィーズリーと本日ルーマニアに帰る為、
両親と名残を惜しんでお喋りしていた二男のチャーリーは思わず、不意を突かれて、顔を見合わせた。
「こんな朝から来客とは、珍しいな。もしかしたら、魔法省の誰かかな。」
「いいよ、父さん、僕が出る。」
ちょうど、モリーは食糧庫に行っていて不在だ。
もとより面倒見がよく行動派なチャーリーは、すぐに立ちあがって玄関へ向かった。
「はーい。どなた…でしたか?」
「でしたか??」
がちゃりとドアを開け、そこに立っていた人物を目にしたチャーリーは、
言いかけていた言葉の接ぎ穂を失い、少々妙な問いかけをしてしまった。
相手は、同じように目を瞬かせて、首を傾げている。
その人物は、両目共に視力2.0を誇るチャーリーの目がおかしくなったのでなければ、
純血貴族の名家の跡取り、ドラコ・マルフォイ少年だった。
「えーっと…あっ、ロンか!」
なぜに、ここへドラコ・マルフォイが?という疑問を浮かべていたチャーリーは相手が口を開く前に、
少し前、この少年と一人の少女が休暇中遊びに来て、家族一同をひどく驚かした事件を思い出した。
が、目の前のプラチナブロンドの少年は肩をすくめている。
「まあ、最終的にはそうなんだが。Ms.ウィーズリーは?」
「え、母さん??」
またまた不意を突かれたチャーリーがその明るい色の目を丸くした時、
ちょうど食糧庫から戻ってきたのか、後ろからモリーの元気な声が上がった。
「まー、ドラコ君?早かったのね、ようこそ!」
「おはようございます、Ms.ウィーズリー。朝早くから、すみません。」
「まあ、いいのよ!相変わらず、なんて礼儀正しい子かしら!」
どうやら全く驚いていないところを見るに、
ドラコ・マルフォイが本日ここへ来るのは、モリーも知っていた事実らしい。
(アーサーは背後で目を点にしていたので、チャーリー同様知らなかったようだ。)
騒ぐことなく事態を把握しつつあるチャーリーの前で、ぺこりと微かに会釈する少年に、
モリーは感極まった様に、エプロンを目頭に宛がっている。
「ちょっと、チャーリー!信じられる?!
こんな礼儀正しい子がロンと同い年なのよ?おまけに、ロンのお友達だっていうんだから!」
「あ、ああ、うん;」
「あら、いけない!ごめんなさいね、外に立たせたままなんて。どうぞ、入って頂戴!」
「お邪魔します。」
謙虚と言うにはほど遠いが、礼儀はしっかりわきまえているらしい。
母親がひどく喜んでいるのも、なんとなくわかるなぁという思いで、
チャーリーは脇に退き、その純血貴族の子息を中に通した。