長編夢その2-休暇編

□第9幕 新学期のお買い物(後編)
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多くの魔法使い、魔女たちが利用するダイアゴン横町。


その入り口とも言えるパブ、漏れ鍋はいい意味で言えば噂話の好きな人間の溜まり場だ。

そこは監視するには持ってこいの場所なので、ほとんどその好奇の目を逃れられるものはなかった。


本日も、休暇中と言う事もあり、いつもより常連客の多い漏れ鍋の中を3人の少年少女が通って行き、
マスターのトムを初め、常連客達がその姿をじーーっと眺める。





 「「「「…………。」」」」





一言で言うなら、かなり目立つ若者たちだった。


1人はひょろりと背の高い赤毛の少年で、ぐりぐりとよく動く目にそばかすの散った鼻、
口はよく動き、歩きながら、しきりに2人の連れに話しかけている。


もう1人は最初の少年とは対照的に、プラチナブロンドのさらさらした髪に、冷たく見えるアイスブルーの目。

はいはいとも言いたげに、赤毛の少年の話に相槌を打っているが、
口元は笑っていて、冷たい印象を幾分か和らげ、年相応に見せていた。


最後の一人は少女。

また珍しい事に東洋系のようだ。
黒髪黒眼、アジア系にしては酷く白い肌をして、物静かな整った容姿をしていた。

こちらも感情が出にくそうに見えるが、楽しげに笑っている今はその印象も和らいでいる。





 「でさ、今週末のベアーズの試合、あんなメンバーじゃ絶対無理だって!なあ?」


 「僕もそう思うね。なにしろ、相手があのグリスリーズだ。」


 「えー、わからないよ。ベアーズのキーパー、キャプテンも兼ねてるでしょ?すごい迫力の人。
あの人がぐいぐい引っ張ってくれたら、即席のインスタントチームでもいい線いくかも。」





どうやら、クイディッチ好きの3人組らしい。


あの年齢なら、ホグワーツ生だろうと噂好きの漏れ鍋常連たちは即断した。

今は夏季休暇中だが、きっと、新学期の学用品の買い出しに来たに違いない。
ここ、1週間ほどはそんな若者たちで、ダイアゴン横町はひどく賑わっている。





 「にしても、男の子2人に女の子1人って珍しいねえ。」


 「そうかい?よくいるじゃないか。でも、あの3人組はなんていうか目立つなぁ。」


 「みんな、えらく整った顔してるから。あの赤毛の子は愛嬌があるって感じだけど。」


 「どの寮だろうね?」


 「そんなことより、あのブロンドの子、マルフォイ家の息子に見えないかい?」


 「そんな馬鹿な。」


 「ないない。あそこの家の人間なら、召使でも連れて歩いてるよ。」


 「じゃあ、あの赤毛の子、ウィーズリー家じゃないかね?」


 「あそこは子供が多いからなぁ。」





そんな会話がひそひそと盛んに交わされている内に、自分たちが酒の肴にされているとも知らず、
その3人、ドラコとロン、緋色は無事、ダイアゴン横町へ入って行った。





 「あ、そうだ。緋色、あのピン持ってきた?」


 「うん、ちゃんとつけてるよ。」





ほらとグリーンのワンピースの襟に留めたご贔屓クイディッチチームのピンバッチを見せた緋色に、
ドラコとロンは安心して頷いた。


ホグワーツの緋色の部屋からここへ来る前、念のためプレゼントしたこのピンをつけてくれと言われ、
素直な緋色は特に訳も聞かず、喜んでつけてくれた。

これが実際、少女の位置を把握するマグルの道具だと言う事は、ドラコとロンしか知らない。





 「相変わらず、周囲の地図は出ないけど、前と一緒でないよりマシさ。な?」


 「そうそう、備えあればなんとやら。」





目の前には、思った通りの賑わいで、人込みが延々と続く横町のレンガ敷きの道。


これで、はぐれた挙句、緋色が危険な目に遭いでもしたら、
どこぞの黒づくめの過保護者からの制裁で、ドラコとロンは生きて新学期を迎える事は出来ないだろう。
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