秘書と学者シリーズ
□秘書と学者の出会い(後編)
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「………と、というわけで、本当に申し訳ありませんでした;;」
「ふむ?」
とてもじゃないが、人が住んでいるとは思えなかったスピナーズエンドの1軒の家の中。
大なべが設置された部屋の片隅にて、申し訳程度に置かれていたソファにセブルス・スネイプが座り、
その前で、マーシャル・ハワードが深々と頭を下げていた。
床に倒れていたスネイプを、てっきり息絶えた死体だと思っていたマーシャルは、
目の前で突如起き上がったスネイプを驚きのあまり張り飛ばしてしまい、
スネイプが再び意識を取り戻すまで、大慌てでソファに運んで介抱していた次第だった。
現在、スネイプは腫れた頬にマーシャルが探して冷やしてきたタオルを当て、大人しく事情を聞いている。
「それで、その、Mr.マルフォイからお荷物を預かっていたんですが、
ドアを叩いても全く反応がなかったので、てっきり空き家なんだと…。」
最悪、不法侵入および傷害罪で警察に突き出されても文句は言えないと、
マーシャルがしゅんと頭を垂れつつ、そう説明をすれば、
その黒づくめの魔法使い、セブルス・スネイプはまだどこかぼーっとしながらも、ああと声を上げた。
「それはすまないことをした。今、ちょうど実験中でな。
とても手が離せなくて、つい3日ほど食べるのも寝るのも忘れてしまったらしい。
それで意識を手放したところに、君が…えー、Ms…。」
「あ、申し訳ありません、私、マーシャル・ハワードと申します。あの、その前に、スネイプ教授?」
慌てて自己紹介をしつつ、マーシャルは恐る恐る口を挟んだ。
「あの、今、3日ほど飲まず食わずで、寝てもいない的なことをおっしゃいました?」
マーシャルは、まさかねー!くらいのノリで聞いたのだが。
どこか、まだぼーっとしている黒づくめの魔法使いは、ひどくあっさり頷いた。
「左様。たぶん、今日で4日目だ。」
「………飲まず食わずが?」
「?ああ。」
「寝てもいないと?」
「ああ…いや、さっき気絶していたから寝ている。」
「気絶は睡眠とは違います!!」
思わず、ほぼ初対面の相手に、思い切りつっこんでしまった。
ていうか!!とマーシャルは慌てて、立ち上がる。
本当に、この男の言っている事が事実なら、
何も睡眠不足とかだけではなく、脱水症状も起こしているのでは?
その証拠に、スネイプはさっきから、どうも反応が鈍かった。
「ちょ、ちょっと待っててください!あ、キッチンお借りますね!」
「?ああ。」
不思議そうな顔をしつつも、スネイプは大人しくソファに座ったまま、ぶたれた頬を押さえて頷いている。
それを確認し、マーシャルは大急ぎで、さっきもタオルを冷やすのに借りたキッチンに駆けこんだ。