秘書と学者シリーズ
□秘書と学者の夕食
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「よし、完了。」
ふぅと一息つき、きちっとグレーのパンツスーツに身を包んだブロンドの魔女、
マーシャル・ハワードは、処理を終えた書類をぽんとデスクの端に積み上げた。
ここは、ロンドンの地下深く、魔法省の中だ。
数多くの部署が詰め込まれ、大勢の魔女、魔法使いが働く建物は、
すでに、定員オーバーと言っていいくらいで、場所にも余裕がない。
しかし、魔法省高官ともなれば話は別であり、
その筆頭ともいえるルシウス・マルフォイの秘書であるマーシャルも、一人部屋を与えられ、
そうだだっ広くはないが、適度な広さで快適なワークスペースを確保していた。
「あ、これで最後だったか。」
次の書類…と無意識のうちに伸ばした手は空振りに終わり、
少々上の空だったマーシャルははたと我に返り、自分に苦笑した。
マーシャル・ハワード、29歳、独身。
実家から出て一人暮らしの身であり、手のかかる子供も夫もペットも鉢植えも恋人もいないので、
仕事上でのトラブルがない限り、マーシャルには心配事などない……はずなのだが。
「…………;」
どうも、心配だ…とマーシャルはデスクの上で腕を組み、唸りながら顎を乗せて、ため息を吐いた。
「スネイプ教授…生きてるかしら。」
通りすがりの人間がマーシャルの独り言を聞いたら、少々と言わずぎょっとしただろう。
誰かの体調を心配するにしても、いきなり生きているかしら、はないだろう。
マーシャルも、つい先日まではそう思っていたのであるが、ひょんなことから上司の依頼を受け、
セブルス・スネイプと言うホグワーツの魔法薬学教授に出会った。
そして、そのめちゃくちゃとも言える生活に出くわし、
この人物に関しては、色々と常識を改めることにした次第である。