秘書と学者シリーズ

□秘書と学者の翌朝
1ページ/6ページ








ふわり、と。


体が自然に活動を開始して、その日、セブルス・スネイプは浮き上がるように、
今までになかったほど心地よく目を覚ました。





 (………またか。)





体の下に、床にはない柔らかさを感じる。

どうやら、自分は2日続けてベッドで寝たらしい。

それにしても、今までにこんな穏やかな目の覚まし方をしたこともなく、
スネイプは、やや当惑と言ってもいいような心地で目を開けた。


目に入ってくるのは、薄っすらとカーテンの向こうから差し込む微かな光と、柔らかなブロンド。





 「!……マーシャル?」





思わず、口に出して呼んでしまい、
閉じ込めるように腕の中に抱いていたブロンドの魔女が、んんん…とむずがるような声を上げた。


慌てて口を閉じ、息をひそめる。


そのうち、その魔女、マーシャル・ハワードはまたすぅすぅと、
聞いている方が眠たくなってくるような穏やかな寝息を立て出し、スネイプはほっと胸をなで下ろした。

よかった、起こさずに済んだ。


そう思った途端、違う感慨もわき上がって来る。





 (…………。)





朝、マーシャルがまだ腕の中にいる。


昨日もそうだったが、今も間違いなく、
マーシャルはスネイプの腕の中にしっかりと収まり、鼻先をすり寄せるようにして眠っていた。

その姿を見ていると、らしくもなく歓喜に胸が膨らむ気がする。





 「………。」





もしかしたら、本気でマーシャルは自分を好いてくれているのかもしれない。

いや、マーシャルの性格からして、好きでもない男と同じベッドで寝たりしないだろうが、
自分のとんでもない独占欲と束縛のし方からして、長く好いてくれるか正直心もとなかった。


今も、僅かな日の光の下で、マーシャルの胸や首元、鎖骨にはスネイプが噛みついた後が、
鮮やかとはとても言えないような痛々しい色で残っている。

こんなに内出血するまで噛んでいたとは思っていなかった。

さすがに痛かったのではなかろうか。


そう思って、スネイプは後悔にちくちく胸を刺されながら顔を曇らせたが、
そんなスネイプの腕の中で、当の本人が満ち足りた顔ですやすや眠ってくれているのが救いだった。



その顔を見ただけで、全てを許されるような気になって、
スネイプは思わず、またマーシャルを抱きしめて、ベッドに沈んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ