秘書と学者シリーズ
□秘書と学者のホグワーツ騒動(後編)
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「それでは、只今よりセブルス・スネイプ教授に対する確認事項を挙げていただきます。」
とある日の昼下がり、重々しくそう口火を切ったのは、ミネルバ・マクゴナガル副校長であった。
場所はホグワーツの職員室であり、今は休暇中なのだが、
そこには、ほとんどの教授たちが顔を揃えている。
「まずは、わたくしから。そもそもの発端、なぜ、休暇中セブルスが意識のある状態だったのか。」
マクゴナガル自らそう発言すれば、教授たちも深刻そうな顔をして頷きあった。
「それどころか、普段より顔色がいいくらいでしたよ。」
「まさか、三食食事をして睡眠をとっているとか…?」
「なんてことでしょう、あり得るんですか?」
まるで、異常気象について話し合われているかのような深刻ぶりである。
「そういえば、もう一つ違和感があって…スネイプ先生のシャツ、しわ一つありませんでしたよ。」
恐る恐る手を挙げて、そう言ったのはスプラウト教授だ。
まさか、そんな!とまた室内がざわつく。
つまり、『あの』セブルス・スネイプ教授のシャツにアイロンがかかっているということだろうか?
屋敷しもべ妖精のいる学期期間中ならともかくも、この長期休暇中に?
「ていうか、俺が警察に連行されてえらい目に遭ったことは話題になんないの?」
はーい!とここでイギリス警察のお世話になって、
ようやっと今朝解放されたばかりのシリウス・ブラックがげっそりした顔で口を挟んだが、
残念ながら、セブルス・スネイプの珍事ほど重要とはみなされなかったらしく、
綺麗にスルーされてしまった。
「禁じられた呪文は知っていても、衣類のしわ取り呪文なんてセブルスが知ってるわけないわ!」
「それどころか、乾燥呪文だってたまに失敗してますよ。」
「そういえば、一度ローブを燃やしてましたね。」
フリットウィック教授は、ううんと感慨深げに頷く。
乾燥の呪文一つとっても仕事としてなら、スネイプは失敗しないだろうが、
自分個人に関わることで、特にその生活に関する面では必ずと言っていいほど失敗する。
恐らく、スネイプの中で自分の実験以外の私生活は、無意識に重要とみなされないのだろう。
すごい人間もいたものだとフリットウィック教授は首を振っていた。