普通の夢
□女神は微笑んだ
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俺は軍の一員だった。
それなりに強く、信頼されている。
銃とか爆弾とかじゃなく、槍だ。槍や弓、剣で戦うあたり、現代では無さそうだ。
ある日、上皇が軍の誰かによって殺された。その現場を見たというやつが、「氷雨が犯人です」と言ったらしい。俺は今軍から逃げている。
逃げているといっても、城の周りをぐるぐる走り回っているだけなのだが。
何故かって?それはあれだ。俺が逃げ切る前に、軍の全員が城の塀から俺に向かって矢を一斉に射っているからだ。
遠くへ逃げたいが、絶対無理!俺のそばで常に矢が飛んでるからそれを避けるので精一杯。
それでも、運動神経が良かったためか、今まで死なずに済んでいる。
あれから何時間経っただろうか。未だに矢の雨は止みそうにない。
(これ…ヤバい!ヤバい!死ぬっ!)
「なんで殺ったんだ!」
「お前がやったんだろう!」
「なんでお前が!」
「裏切り者め!」
「俺はやってない!!」
仲間の罵声と矢を浴び続けていると、何故か、自分自身でも、俺が犯人のような気がしてくる。もう体力的にしんどいし、何しろこの罵声で精神が持たない。
俺、殺したんだっけ。認めた方が楽になるのか。違う!だから俺は…
グサッ
「っ!」
矢が喉に刺さった。かなり痛い!!何とか自分で矢を抜く。痛くてもその場にうずくまることはできない。次から次へと降ってくる矢から逃げなければならない。
(い………てぇ…………。)
逆に、今まで矢に当たらなかった事が奇跡だ。矢が喉に刺さったのにまだこんなに意識が保ててるのは、俺が痛みを受けなきゃならないからなのか?
「だから…俺じゃないって!」
誰も聞いてくれない。
皆、俺という偽りの犯人を仕留める行為に酔いしれている。聞こえるのは罵声と、矢を射つ音と矢が飛ぶ音のみ。
どう言ったって、あいつらには何も聞こえない。
さっき喉に刺さったからだろうか、体がふらついて矢をうまく避けれない。
バシュッ
「うッ………」
今度は腕に刺さった。
(もう駄目だ…ここで逃げてても…いや…
痛すぎて逃げれない…。せめて…真実を話したい…。)
決死の思いで俺は城壁から離れ、城門の前まで来た。
だがそこで俺はうつ伏せに倒れてしまった。