普通の夢

□色
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ドアに穴が空いていた。古っぽい木のドアだ。何故かそこだけ、切りつけられたような形で穴が空いていた。鍵はかかっていない。

その部屋で起きていることを、穴からジッと覗く。
見たけりゃ堂々とドアを開けて見りゃいい。俺は、怖くてそれができなかった。
目の前で起きているそれが、何なのか解らず、混乱する。
しかし、それが、死体ができあがるような危険なことなのは理解した。
部屋の中には、本が沢山詰まった本棚がいくつもある。ここは、資料室か?
男が二人いる。なにか、戦っているように見えた。一人は防戦一方で、もう一人は戦いに慣れているようだ。
俺は怖かった。防戦一方の男は、長テーブルの上でうずくまり、暫くすると、仰向けになり、動かなくなる。
多分、この男は死んだ。
これだけを見て、俺は、今生き残った男が悪者だと感じた。
だが不思議と、動悸息切れなどはしない。
俺は本当に怖がっているのか?

彼は、動かない男に向かってふうっとため息をついた。疲れてる様子はない。むしろ、なんの感情も無いみたいだ。顔には何一つ彼の心情がわかるようなものが出ていない。冷淡。冷静。

「さて」

彼が身を翻す。

とても、綺麗な姿だった。この瞬間だけ、彼と、彼の周りに色が付いた。その光景は、俺の記憶にこびりついた。
まるで、写真の一枚であるように、その光景は、俺の視界からペラッと剥がれ落ちる。しかし、写真の後には、また同じ写真がある。次々に写真がめくれる。しかし、出てくる写真は同じもの。

これは、なんだ?

俺の…頭の中で再生されているのか?

彼が印象的、衝撃的過ぎて、その光景から頭が離れない。

なんてことを考えていると、(これを思ったのはわずかコンマ数秒なのだが)

ザクッという音がした。
斧が、ドアに刺さった。

どういう能力?

彼が先程身を翻したら、壁に掛かっていた斧が飛び、ドアに刺さったのだ。
しかも、俺が覗いていた穴に命中。
おかげで、部屋の中が見えなくなった。

キィ…

ドアが、ひとりでに開いた。
彼が、立っていた。

「で、俺に何か?」

彼は、笑っていた。
彼だけに、色がある。
あぁ、そうなんだ。俺は、いつもの世界がモノクロだということを、忘れていたんだ。
俺は、世界に、自分が思うように、自分に都合の良いように、勝手に色を想像していたのかもしれない。
俺は、彼に見惚れたのかもしれない。
彼が、本物の色なのかもしれない。

俺達は、ずっと見つめあった。
見つめあったと言うより、お互い何も言えず、動かず、時が止まったよう。

部屋が崩れてきた。
ここの世界も、もうすぐ終わり。


―― 生き残った男 ――
黒髪黒目
細身
水色〜青色のトップス
黒のジーンズ?
戦闘能力に長けている?

青の男とでも名付けよう。
全体的に、青のイメージに感じた。
写真、欲しい。

この男が、本物の、色だ。
俺に色が付いていたかなんて、わからない。

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