普通の夢

□虹 vol.2
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空は快晴。高層ビルが建ち並ぶこの街で、おれはあるビルの屋上に座っている。
あぐらをかいて空を見ていた。
しんとした静けさがとても心地よい。
まるで、この世界に俺1人だけがいるようだ。
このビルが高いせいか、街の雑踏や車の音が、まったく聞こえない。
ああ、とても心地よい。

( 太陽が、ないな。)

というか、俺は何も考えていなかった。
ただ空を眺めていただけだから、本当に心安らいでいたかはよくわからない。
でも、そう思った。

空を見渡すと、虹があった。

( 雨も降ってないのに、虹が出来るかなぁ。)

少し不思議に思ったが、気に止めなかった。俺は、腕を枕にして屋上のコンクリートに仰向けに寝そべる。

( 空だ。これは、空だ。)

どれくらい時間が経っただろう。
俺は、フッと我に帰って起き上がる。
まだ、虹があった。

( あれ。虹って…こんなに長い時間現れないよね…。)

少し、怖くなった。俺は、ここが、俺の居るべき世界だと信じて疑わなかった。
だけど、この虹を見ていると、それが空虚なことに思えてくる。
取り残された気分だ。ここはどこだ?

「りりりりりり」

( ! 電話だ。)
ケータイに電話がかかってきた。
姉貴からだ。

「はい。もしもし。」
「彪?今どこにいるの?」
「えっ…………。………わからない。」

すごく、きれいな虹が、見える場所だよ。

「あんた、いつまでそこにいる気」
「…?」
「そこは、現実世界じゃ、ないよ!」
「え?」

は?

「早く戻ってきな!!」
「どういうこと?!」
電話が切れた。姉貴は最後に、駅で待っているからと言った。
よくわからないながらも、ビルから出て、駅に向かった。

俺は、この世界が現実だと思っていた。
じゃあここは、なんなんだ?!
そう思うと、虹も、プラスチックに見えてきた。


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