普通の夢
□彼の重荷
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ある日本風の家に行った。
インターホンを押すと、人が出てきた。
用事があったのだが、俺はこの人と顔を合わせたことはない。ハジメマシテの人だ。
茶色の短髪で、少し焼けた肌、銀魂に出てくる新八と(多分)同じ服を着ていた。
「良く来たな。待ってたぞ。」
そう言って、門の扉をスパーンと開けた。
「悪いな、急に。」
「いや。」
側には同じ種の犬が4〜5匹。
犬好きなのだろう。
「!か〜わいい犬だな!」
「だろ!」
可愛かったので、1匹を抱き上げてみる。嬉しそうにわんわん鳴いている。他の犬もわんわん吠えていて、だっこしてほしいと言っているようだ。どうやら人なつっこい犬種らしい。
(この犬たち!ハウルに出てくるオバサン魔女の犬にそっくりだ!!まさにこの犬!)
付いてこい、という言葉で、俺たちはこの家の蔵に向かった。
「古い蔵だからな。ギシギシいってるだろう、床が抜け落ちるかもしれないから気を付けろよ。」
「ああ、わかった。」
俺は、注意を受けながらも、床ではなく、目の前にあるこの姿を見ていた。
(着物なのに。和服なのに…。こいつ、下にジーパンを着てやがる!
手練れだ!)
そしてこいつは、俺に振り返りながら話を続ける。
「俺は長男でな。この家系の子孫は俺しかいないんだ。」
「…そうか。」
「だから、お前みたいな話せるやつが来てくれて、本当嬉しいよ。」
わかってしまった。なんでわかったのか、は…解らないけれど。
(ああ。こいつ、女だ。跡継ぎがいないから、男のふりをしているんだ。)
「…っと、着いたぞ。これだ。」
「うわ…。」
「素晴らしい刀だろう?家宝なんだ。」
彼は、刀を両手で大事そうに持ち上げ、狭い窓から入り込む太陽の光にかざした。
彼の目も、照らされた刀と同じくらい、キラキラと輝いていた。
(…俺は、黙っていよう。言うつもりもないけど。たぶんこいつも、言ってほしくはないだろうし。)
(でも、もし、気づいてほしいと思ってるなら、俺は、俺は…………。)
END
言えるだろうか?