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□再会は賢帝の墓標の前で 0
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遠い日の戦争で活躍したと云われる彼は若き日に父の跡を継ぎ、力も知識もない若造だと陰で囁く者達を己の実力で黙らせ、二度と過去の過ちを繰り返させまいと寝る間も惜しみ奔走した。
それは国と己のための努力か、或いはたった1人に対する贖罪か。
彼が国を治めていた当時、彼(或いは彼等)が過去の戦争に関してを語ることは殆どなかった。
讃えるべき英雄についてはその経歴から何もかも、名前さえ口を噤み、誰がどれだけ希おうとも語ることはなかった。
時が流れるにつれて変えられていく過去を目の当たりにしても、それが正しい事なのだとでも云うように彼(或いは彼等)は口を噤み続けた。

そうして彼はいつの日か、賢帝と呼ばれるようになっていた。





『私という些細な存在など、時が流れるにつれて残滓さえも遺さすに忘れられてしまうだろう』



「そう云って嬉しそうに笑った彼奴の顔が、今でも忘れられない。」


それは様々な感情が入り混じった独り言(呟き)だったと、それを偶然耳にした人物は後の世でそう語った。
結局彼がかの英雄について口を開いたのは、それが最初で最期だった。



遠き日の英雄を想い、賢帝は静かに目を伏せた。



















『再会は墓標の前で』の裏話的なかんじ。
うちのシーナはこんな役回りです。

































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