short

□うた
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うた






遥か彼方遠いかの地へ、輪廻の輪に戻されることさえ許されぬ彼のため響き渡れ、この声よ。
この身の内で激しく荒れ狂う悲しみと感謝と愛情を貴方に捧げよう。
いつか忘れ去られる痛みを私に与え、いつか消え去れる傷跡も私に残し、延々と語り継がれる怨嗟さえも、忘却が許されぬ私に向けて。
そうしていつまでも私を縛って逃がれることがないように鎖に繋いで。
凍えるような空気を肺が満ちるまで吸いこむ(陸にいながら溺れているようだ)
咽を震わせ音を発し、祈るように呪うように嘆くように、私は歌う。



嗚呼、嗚呼、私の時間よ。
あの血だまりと陽だまりの日々よ。
私の幸福の日々よ。
いつかの日の絶望よ。
たとえ世界を拒絶してでもも。
私の記憶だけは奪わせない!



歌う声は高らかに、黒に染まる空に響いて消えた。

私のための鎮魂歌。




















時間軸的にはV直後を想定
傍観者であるけれど大切な人の冥福を祈ることくらい、己の未熟さと選択を後悔するくらい、させてほしいと望む坊





















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