第2書庫
□1.二つ銘で呼ばないで
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彼が他の者を普通に呼ぶ声。
その声に自分の名が発せられないことにふと寂しさを感じる自分がいた・・・
1.二つ銘で呼ばないで
いつもの様に弟と共に此処、イーストシティを訪れたエドワードいつもは直ぐに司令部を訪れさっさと報告を済ませるのだが今回はそんな気が全く起きずどうしようかとのらりくらりとしていた。
そんな、エドワードの様子にいつもの事ながらアルフォンスは咎める言葉を発しようとした瞬間ある人物の姿が見えたのに気付いた。
「あっ・・・大佐だ」
アルフォンスは自然とその呼び名を口に出しその言葉にエドワードが反応しアルフォンスが視線を向けるその人物、ロイのいる場所へと視線を向けた。
するとそこには綺麗なブロンドの女性と仲睦ましく歩くロイの姿が見られた。
女性へと笑顔を見せるロイに嬉しそうにその腕へと自分の腕を絡める姿は傍から見れば恋人同士にも見える。
「綺麗な人だね、付き合っているのかな?」
アルフォンスは後見人であるロイのデート現場を始めて見るためか興奮気味に言葉を発しその姿をエドワードは他人事の様に聞いていた。
「・・・さぁな・・・・・・アル、宿へ行くぞ」
「あっ、兄さん!」
エドワードの興味のなさそうな態度にアルフォンスは首を傾げながらも慌ててその後を追ったのだった。
■□■□■
その日は報告書を持って行くのは無理だと判断した二人は次の日に司令部へとやって来た。
そこには当たり前ではあるが昨日女性と歩いていたロイも仕事をしておりアルフォンスは昨日の事が気になってかそわそわとロイの姿を窺っていた。
これにはロイも気付かないわけではなくロイは首を傾げながらもアルフォンスへと言葉を発した。
「どうしたんだね?アルフォンス。私の顔に何か付いているのかね?」
「!?いっ、いえ!何でもありません」
アルフォンスはロイの言葉にあからさまに動揺し慌てて否定をした。
ロイはそのあからさまに動揺するアルフォンスにさらに不審を募らせ首を傾げていると傍観を決め込んでいたエドワードが溜め息を吐きながらアルフォンスの代わりに答えた。
「アンタが昨日デートしていた女性と付き合っているのか気になっているんだよ」
「にっ、兄さん!!」
面倒臭そうに答えたエドワードにアルフォンスは慌てて声を上げているとロイは『昨日?』と思い出そうとするように手を顎へと当て考える素振りを見せた。
そうして暫くした後思い出したのか『あぁ』と声を上げた。
「エリザのことか?彼女とは別に付き合っていないよ。ただ、食事に付き合っただけだが」
「なんだ、そうだったんですか」
「名前聞いてねーし・・・オレどうでもいいんだけど」
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