第2書庫
□軍人としての使命
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エドワードは何事もなかったようにアルフォンスの背を押し部屋を出て行こうとする。
しかし、アルフォンスは納得ができていない為そんなエドワードを見て叫んだ。
「兄さんはそれでいいの!? だって、戦場に行くんだよ! ボクは嫌だ!! ねぇ、お願いだよ。 行かないでよ・・・」
アルフォンスの悲痛な叫びにエドワードは顔を俯かせる。
一方、ロイはそんな二人のやり取りを黙って聞いていた。
確かにアルフォンスの気持ちもわかる。たった一人の家族がいつ戻って来るか―いや、戻ってこれるか危うい場所にたった一つの命令で行くというのだ。
「アル・・・・・お前の気持ちもわかる。でも、これは国家錬金術師になった時点で覚悟していたことだぞ」
その言葉を聞いてアルフォンスは押し黙った。
エドワードの言っている事はわかる。
頭ではわかっているつもりだがやはり気持ちの方が納得いくはずはない。
「それに、オレだけじゃない。この司令部からは大佐だけなんだ。中尉たちは行かない・・・」
アルフォンスはエドワード言葉を聞いて驚く。
てっきり、ホークアイ中尉やハボック少尉も行くと思っていた。
「だから、お前はオレが帰って来るまで中尉たちの手伝いをして待っていてくれ・・・オレたちが無事帰ってこれるように・・・」
「兄さん・・・・・」
兄弟たちの話がある程度纏まった様子にロイは声を掛けた。
「そういうことだ。アルフォンス、鋼のは私がきちんと連れて帰ってくるから心配をしなくてもいい。」
ロイはそう言うと安心させる為、アルフォンスの肩を軽く叩いてみせた。
「連れて帰るって、オレは自分の足でちゃんと帰ってくる!」
照れからなのかエドワードはそう言うとそっぽを向いた。
その様子に二人は笑う。
そして、アルフォンスはロイの方を見ると頭を深く下げた。
「兄さんをよろしくお願いします。大佐も無事に帰ってきてくださいね」
「あぁ、帰ってこないと中尉たちに何を言われるかわかったものではない」
ロイが冗談を言って見せると二人は笑い『確かに』と同意した。
「さぁ、もう晩いから帰りなさい。明日は色々と出発準備などで忙しいから」
ロイはそう言うと二人の背中を押し部屋の入り口まで見送る。
そんな様子のロイにエドワードは何か言いたそうな表情で見上げた。
「ん? どうした鋼の」
「いや、えっと・・・ 心配かけて悪かったな。ただ、それだけっ!」
エドワードの照れた様子での言葉にロイは笑みを浮かべると『どういたしまして』
と答えた。
アルフォンスはそんな兄の様子に少々驚いたが、見なかったことにし先に部屋を出て行った。
―― 願はばくは、
少年のあの笑顔が戦場で消えない事を祈る ――
とロイは思いながら兄弟たちの後姿を見送った。
軍人としての使命【完】