第2書庫
□失っていく理性
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それから数時間経ってエドワードは再度気がついた。
自分はそのままロイの促せるまま、また眠ったようで気がついたのは真夜中のことだった。
場所は自分に設けられたテントの中のようだったのでロイは居らずエドワードは内心ほっとした。
身体はまだ戦場の中に居るためあまり休まってはいないが取り敢えず頭を冷やすため外に出た。
外は北方というだけあって春から夏になろうというのにまだまだ身体が冷える時期であった。
しかし、この冷やりとする感じが返って頭を冷やすことができエドワードは助かった。
頭がすっきりとしてくると同時に自分がとうとう人を殺めてしまったことを再度認識でき段々目頭が熱くなってきた。
涙が出てきそうな目をしきりに瞬かせなんとか堪える。
まだ、今は泣く時期ではない。
泣く暇があるんだったら早く、この戦場を終わらせなければと自分にしきりに言い聞かせる。
そうしてあれこれ考えていると突然、後ろから声がかかってきた。
「鋼の・・・・・・」
ロイの突然の声掛けに身体を一瞬、震わせるがそれを気付かせないよう返事を返した。
「どうしたんだ? 大佐」
苦笑を見せて返事を返したエドワードにロイは無理をしているとわかってはいたが敢えて触れようとはしなかった。
「身体の方は大丈夫なのかね?」
「あぁ、大丈夫だよ」
「じぁ・・・・・・心は?」
ロイの言葉にエドワードは目を見開き、固まった。
やっぱり隠せないじゃないかと内心思い、溜め息を吐く。
「・・・・・・大丈夫じゃない」
「・・・・・・・」
素直な返事が返ってきたことにロイは驚くが今は彼の言葉を聞いてあげないと、と思い無言で聞いてやる。
「オレ・・・とうとう人殺しちゃった。最初はなんとか殺さないようにって頑張ってたんだけどさ・・・・・・・やっぱ、無理だった」
「・・・・・・」
「そのうちどんどん当たり前になって、もう・・・何人殺したかわかんねーや」
エドワードは今にも消えてしまいそうな悲痛な表情で答えた。
戦場だからそれは当たり前と化しているが理性でそれは人殺しだと警告している。
戦場だからといって当たり前というわけにはいかない。
そんな姿を見たロイは無意識のうちにエドワードを抱きしめていた。
「たい・・・さ・・・?」
ロイの行動にエドワードは驚きを見せていた。
「すまない・・・私の力が足りないばっかりに君にこんな思いをさせてしまった」
「大佐のせいじゃない」
「いや、私のせいだよ。戦場がこういうものだとわかっていたのに止めることができなかった・・・」
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