第2書庫
□この手にあるのは儚き祈り
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「それに熱のせいかあんまり目、見えないし・・・」
エドワードの言葉にロイは驚く。
「見えていないのかね?」
「ちょっとな・・・」
「だったら・・・」
ロイが医師を呼ぶために立ち上がろうとしたがエドワードが軍服の裾を握っていたため出来なかった。
「大丈夫・・・多分熱が下がれ・・・ば・・・」
エドワードは言葉を紡ごうとしたが朦朧とする意識の中、そのまま瞳を閉ざしてしまった。
それに慌ててロイが呼びかけると微かな寝息が聞こえてきて内心ホッとする。
「・・・なんだ、寝ただけか・・・まったく、君は心配ばかりかけて」
ロイは一人呟くとエドワードが裾を掴んだまま寝入ったため動けない身体を再度の椅子へと下ろし、実年齢よりも幼く見えるその素顔を苦笑しながら見つめた。
そこへちょうど、アルフォンスも到着したようで病室の扉が開いた。
「兄さん!!」
心配の声を露にしているアルフォンスへロイは口に人差し指を当て静かにするように促した。
その行動に気付きアルフォンスは静かにエドワードの寝ているベッドへと近づく。
「今、寝たばかりだから少し休ませてやってくれ。随分、無理をしたみたいだからね」
「ご迷惑をかけてすみません」
アルフォンスはロイの言葉に丁寧に返しお辞儀をした。
相変わらずのアルフォンスの行動にロイは微笑んだ。
「いや、いいんだよ。気にしなくても、それより私は帰還報告をしなければならないから後はお願いするよ」
「はい」
アルフォンスが返事を返すとロイはハボックを従えて部屋を出て行った。
エドワードと二人っきりとなったアルフォンスは眠るエドワードを見て一人呟いた。
「無事とはいえないけど戻ってきてくれてよかった」
※※※
エドワードが病院に運ばれてから数日が経った。
「早く、退院できないのか」
熱も下がったが熱のせいで視力が低下しているため回復しだい退院ということであったためエドワードは退屈で仕方がない様子で呟いた。
その呟きを聞いていたアルフォンスは呆れた様子で答えた。
「まだ、先生が退院していいって言っていないんだから大人しくしなきゃダメだよ」
アルフォンスの注意する姿を見てエドワードは足をバタつかせた。
「暇なのは性にあわね〜!」
そんな様子のエドワードにアルフォンスはまたか・・・と思ったが口には出さず、無視を決め込んだ。
「アル、聞いてんのか」
「うるさいな〜 大人しくしててよ。第一、自業自得なんだからね。そんな状態じゃ旅もできないんだよ。本も読めないんだよ。わかってる?」
アルフォンスの説教にエドワードは言葉を返せない。
と、そこへちょうど扉のノックをする音が聞こえエドワードは助かったとばかりに返事を返した。
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