第2書庫

□この手にあるのは儚き祈り
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 「どうぞ」

 「もう、兄さん! 聞いてるの?」

アルフォンスの抗議の言葉を流し、エドワードは扉の方へと注意を向けると入って来た人物が声を発した。

 「やぁ、鋼の体調はどうかね?」

エドワードはその声を聞き呆れた様子で声を発した。

 「また、あんたか大佐・・・仕事はどうした?」

エドワードが入院してから毎日のように来るロイに呆れた様子でエドワードは言った。
しかし、ロイはそんなことを気にしている様子もなく持ってきた花をアルフォンスへと渡す。

 「ありがとうございます。大佐、綺麗な花ですね。兄さん、僕はこの花を活けてくるから大佐と喧嘩しちゃダメだよ」

アルフォンスはそう言うと部屋を出て行き、アルフォンスが座っていた場所へとロイが座った。

 「で、大佐・・・仕事はどうしたんだよ」

不機嫌そうに言葉を発したエドワードにロイは苦笑しその疑問を答えてやった。

 「仕事が終わったからここに来ているんじゃないか。それより、まだ見えないのかね?」

エドワードはロイの言葉に本当に終わったのかぁ?と内心思いながらもロイの言葉に返事を返した。

 「あぁ、まだ見えない。先生が言うには熱もだろうが、極度の緊張のせいで見えなくなったストレス的なものだろうって言ってた」

 「そうか・・・」

エドワードが言っている極度の緊張とは戦場に居たことだろう。
確かに、戦場から帰ってきた兵士で不眠症に悩まされたり、精神的な面でかなりの打撃を与えられる者もいなくはない。
それに、エドワードはまだ子供だ。
あんな場所に行って平気なはずはない。

 「あんたのせいじゃないんだから気にするなって、先生も回復するって言っているんだからさ」

ロイの様子をどう解釈したのかエドワードはロイを励ますように声を掛けた。
そんな、エドワードの気遣いにロイは嬉しく思った。

 「ありがとう。別に気にしているつもりはないんだが・・・君がそう言うのならそうなのだろうな」

ロイは苦笑して答えた。

 「だってあんた、普段顔に出さない癖してオレの前で顔に出てんだ。オレでもわかるよ。」

 「そうなのか?」

いまいち、わからないといった様子でロイがエドワードに聞いたらそうだよと返事が返ってきてロイは気をつけなくてはと呟いた。

 「ぷっ・・・あはは! いいんだよ。あんたはそのまんまで、その方が人らしくていい」

一人呟くロイを見てエドワードは噴出しロイは不機嫌そうな顔をした。

 「人をなんだと思っているのだね。君は」

 「あはは・・・ごめん、ごめん。だって、あんたいつもなに考えてんだかわかんない顔するからさ。その方が、新鮮で面白い」



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