第2書庫

□この手にあるのは儚き祈り
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 「で、次はどこへ行くのかね?」

ロイは次の目的地についてエドワードに問いかけた。

 「うーん・・・あんまり有力な情報じゃないんだけど、アルがここに居る間に聞いたって言ってたから今は情報もないし西に行ってみようと思う。」

ロイはエドワードの言葉に頷き仕方がないだろうと言った。
そして、その話が終わるとロイはエドワードにデスクの引き出しから出した一冊の本を手渡した。

 「移動の時にでも暇つぶしに読んでみなさい。そちらもあまり有力な情報とは言えないが少しは役に立つだろう」

手渡された本をエドワードは受け取りその本の内容を一通り目で通して見る。

 「いや、ありがとう。大佐にしては気が利くじゃん」

そう言って二カッと笑ったエドワードを見てロイは脱力した。

 「だから、君は一体私をどういう目で見ているんだね・・・」

 「普段の大佐の行いが悪いからだよ」

 「それは君だって同じだろう。毎度毎度、問題を起こしてくれてちょっとはこちらの苦労というものをわかってくれればありがたいんだがね。鋼の」

エドワードの皮肉に対してロイは皮肉で返し、エドワードはそれに剥れたようにそっぽを向いた。
いつもはしない行動を取られてロイは固まってしまう。
てっきり、怒鳴るかと思った。
そんな、様子のロイにエドワードは気付き、訝しげにロイを見た。

 「なんだよ・・・その顔」

 「いや、いつもの君と違うからどっか頭でも打ったのかと・・・あぁ、本調子ではなかったね」

そう言ってロイは勝手に解釈しエドワードはそれに不機嫌そうに見つめた。

 「うがぁーーっ!! なんか腹立つ! 一発殴らせろ!!」

エドワードはそう言うと右手に握りこぶしを作りロイへ向かって一歩進んだ。
それに焦ったロイは両手を挙げ慌てて止めに入る。

 「そうやって直ぐに人を殴るのは止めたまえ鋼の!」

その言葉を聞いたエドワードはにやりと笑みを浮かべたかと思うと笑い出した。

 「ぷっ・・・あはは、大佐の顔面白れ〜ほんとに殴るわけないだろ。あんたも馬鹿だな」

エドワードの笑い声にロイは眉間にしわを寄せエドワードを見る。
そして、一頻り笑ったエドワードはロイに背を向けた。

 「んじゃ、そろそろ行くわ」

そう言って扉に向かって歩き出した。

 「鋼の」

突如、声を掛けてきたロイにエドワードは振り返った。

 「ん?」

 「気をつけていって来なさい」

一瞬、エドワードは何を言われたのかわからずキョトンとするがロイの顔を見て直ぐに理解すると笑って答えた。

 「ありがとう」

そう言ってエドワードはロイに微笑み返すと今度は振り向かずに執務室を出て行った。
それを暫く見ていたロイは一人呟いた。

 「無事にまたここに帰って来なさい。鋼の・・・」




あの小さな兄弟たちが少しでも安らげる場所であって欲しい。
それがたとえ神を信じない自分があの兄弟たちに送る儚き祈りであっても―――




この手にあるのは儚き祈り【完】





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