第2書庫
□嵐の一日
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エドワードは馴染みのある司令部の廊下を必死の形相で駆け抜けていた。
そして、その様子を見ていた者たちは疑問に思いながら道を開けるとエドワードの後ろを追いかけるように猛スピードで走る人物に驚きを露にし、もう一度道を開けるため慌てて壁へと非難した。
エドワードの後を追いかけていたのはロイであったのだ。
この追いかけっこが始まった原因は数分前に遡る。
嵐の一日
いつもの様にエドワードは報告のため、イーストシティにある東方司令部へとやって来ていた。
弟のアルフォンスは宿を取るため別行動を取っていた。
「こんにちは〜。大佐居ますか〜?」
エドワードはいつも慣れ親しんだ軍人の居る司令室に顔を出すと一人の軍人が答えてくれた。
フュリーだ。
「あっ、エドワード君。元気にしてた? 大佐なら執務室だと思うよ」
「うん、ありがとう。行ってみるよ」
エドワードはフュリーに礼を述べるとロイが居るのであろう執務室へと向かった。
執務室へといつものようにノックも無しに入るとそこにはフュリーが言ってようにロイが一人、ぼーっと空を眺めていた。
「なにぼけっと空なんか眺めているんだ? 大佐」
エドワードはそう言ってロイのいつも使われているデスクまで近付くと報告書を無造作にデスクの上へと置いた。
その乱暴な扱いにロイは溜め息を吐くとエドワードが置いた報告書を手に取った。
「久々に来たと思えば・・・もう少し丁寧に扱えないのかね」
「うるせー、こっちは来たくて来てるわけじゃないんだから別にいいだろ」
エドワードは愚痴を零しながら近くにあったソファへと腰を下ろした。
エドワードの態度を見ていたロイはまた一つ溜め息を吐くと報告書へと目を通し始めた。
暫くして、エドワードが所在無さげにしていると報告書を読み終わったのかロイが声を掛けてきた。
「ところで鋼の、バレンタインって知っているかね?」
エドワードは一瞬、ロイがなにを言っているのかわからなかった。
しかし、暫くして意味を理解すると興味なさげに答えた。
「あぁ、どっかのチョコレート会社が作ったイベントか・・・それがなに?」
ロイはエドワードの言葉に苦笑を浮かべると、いつもは自分の興味を惹かない物には返事を返さないエドワードが返事を返してくれたことを嬉しく思いながら説明を始めた。
「まぁ、間違ってはいないが・・・正確に言うと、とある国の殉教した主教聖バレンティヌスの記念日でその国では女性が男性に愛の告白をする日なんだよ。まぁ、君の言ったようにチョコを贈る風習のある国もあるがね」
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