第2書庫

□1.二つ銘で呼ばないで
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アルフォンスは自分の想像した事と違いその思いがそのまま口に出てエドワードは興味なさそうに答えた。
そんな二人の様子にロイは苦笑すると『報告を聞こうか』と話を進める為にエドワードへと声を掛け、アルフォンスはその言葉を聞くと『じゃあ、僕は司令室に行って来るね』と言葉を残し出て行ってしまいエドワードはこの場をどうするか迷ってしまった。
別にロイと自分の二人で報告するのは毎回の事なのだが今回はその状況が何故か自分にとって居心地の悪い雰囲気に思えたのだ。

 「どうした鋼の?」

ロイはそんなエドワードの心境を訳知らず、そわそわするエドワードを疑問に思いながらも声を掛けた。

 「・・・ッ!あ・・・あぁ、何でもない。それより報告だろ?」

エドワードはロイの疑問の声に慌てて返事を返すと直ぐさま気持ちを切り替え報告を始めた。




 「っと、まぁ・・・こんなもんかな」

エドワードは一通りロイへと報告書と照らし合わせながら説明をし終えるとロイも納得したのか頷き苦笑を浮かべた。

 「しかし、君はもう少し落ち着いて行動できないのかね。これでは弟のアルフォンスも苦労が耐えないだろ」

 「うっせーっ、オレの所為じゃねーし第一あいつらが騒ぎを起こすから悪いんだろ!」

ロイの皮肉にエドワードは不機嫌そうに抗議し、そんなエドワードにロイはさらに苦笑の笑みを浮かべた。

 「まぁ、いいだろう。ところで次の行き先は決めているのかね?」

 「いや・・・まだだけど」

 「ふむ・・・では以前、君に頼まれていた文献が明日借りれるがどうするかね?」

エドワードの予定を聞きロイは頷くと以前からエドワードに頼まれていた文献についてエドワードに話した。
すると、エドワードは直ぐさま反応し飛び上がらんばかりに声を上げた。

 「マジで!見る見る!!」

 「わかった。ただし、持ち出し厳禁だからな・・・私の執務室で読むことになるがいいかね?」

ロイはエドワードの変わりように笑いを堪えるように口元を隠しエドワードはそんなロイの反応に自分の行動を恥じ赤面しながらしどろもどろに答えた。

 「わっ、わかった。此処で読めばいいんだな」

 「では、明日の昼にでも来たまえ。午前中は会議などで忙しいからな・・・昼には準備が出来ると思う」

今だに笑いを堪えるように口元を隠しながらエドワードに言葉を返すとエドワードはさらに顔を真っ赤にし慌てるように早口で『じ・・・じゃあ、明日な!』と答えて執務室を出て行った。

 「かわいいなぁ・・・?何故、私は鋼のが可愛いと思ったんだ??」

出て行ったエドワードを見てロイは無意識に発した自分の言葉に驚き首を傾げながら考えたが答えは見つからず取り敢えず保留にしようと納得し仕事を再び始めたのだった。

 「ッつ〜〜・・・一体、何なんだよ」

一方、エドワードは顔を手で覆い隠しながら一人、ロイの言葉ひとつで自分の心が乱れる理由がわからず混乱していた。
ロイが女性と一緒に居た時もだ。
その姿を見た瞬間、胸の中がもやもやとしたもので支配されたのだ。
錬金術師の性かその理由を知りたいと思う反面、本能が気付いては駄目だと警告を鳴らしている。
そんな気持ちに更に混乱しそうな自分にエドワードは嗤笑(ししょう)すると考える事を止めた。
どうせ考えてもわからないのだ。
こんな事に時間を割くよりも今は自分達の事を考えなければ・・・
エドワードはそう考え直すと自分を待っているであろう弟の許へと足を向けたのだった。





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