第2書庫

□2.鋼VS焔・・・?
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 「大佐、大将連れて来ましたよ」

 「ご苦労。お前の隊はどうした?」

 「大将を捕まえたんで他の隊に任務終了の報告に向かわせたっス」

 「そうか」

ハボックはエドワードを縛っているロープを解きながら報告をし、その様子を見ながら聞いていたロイはそっぽ向くエドワードへと視線を向けた。

 「さて・・・鋼の、取り敢えず申し開きの場を与えようか」

 「ッ!?」

エドワードはロイへと視線を向けた事に後悔した。
口元は笑っているが目が明らかに笑っていない。
底冷えしそうなくらい冷たい瞳をしている。
これにはハボックも驚いた。
ここまで怒るロイは滅多にない。
部下が犯人などに怪我を負わされた時も怒る事があるがここまで感情を表す事はまずない。

 「どうした鋼の?言いたい事があるならはっきり言いたまえ。それとも聞いた方が答えやすいか?何故、逃げた?と」

エドワードの視線に合わせるようしゃがみ、ロイは先程の笑みではなく無表情で問うた。
そんなロイに咄嗟にエドワードは視線をそらした。
今、視線を合わせれば全てを見透かされそうで正直、恐い。
二人がそうしていると報告を受けたのか次々と演習に参加していた軍人が戻って来るのが見え、ハボックはマズイと咄嗟に思いロイへと声を掛けた。

 「大佐、他のヤツらが戻って来たみたいですし取り敢えず話は後にした方がいいっスよ。」

ハボックは視線を向け、ロイもそちらに気付くと溜め息を吐きエドワードから視線を外すように立ち上がった。
その様子にエドワードは取り敢えずこの場はこれ以上責められる事はないとホッと胸を撫で下ろしていると突如、体が宙に浮いた。
ロイがエドワードを抱き上げたのだ。
しかも横抱き、所謂お姫様抱っこというやつだ。
これにはエドワードだけではなくハボックも戻って来た軍人達も驚かずにはいられなかった。
しかし、そんな周りを余所にロイはハボックへと言葉を発した。

 「ハボック、私は鋼のを連れて戻る。後の演習は任せた」

 「え・・・ちょ!ちょっと待って下さいよ!!いきなりそんな事言われても困るっスよ!」

ハボックが抗議の声を上げるがロイは気にした様子もなく出口へと足を向け、そんな状況にエドワードはやっと我に返ると暴れて抵抗した。

 「ちょッ!降ろッ・・・ッ!!」

エドワードは抗議しようと声を荒げてロイを睨もうと見上げた事を後悔した。
そこには先程の冷たい瞳をしたロイが見ていたのだ。

 「君に拒否する権限はない」

 「ッ!!」

ロイはそう冷たく言い放つとそのまま今だに抗議するハボックを置いて練兵所を後にした。
一方、その様子を抗議しながらも見ていたハボックは困ったように頭を掻いた。

 「中尉の命令だったけど失敗したかなぁ・・・でも、あそこまで嫉妬と執着してるのに何で気付かないんだ?」

ハボックはロイの後ろ姿を見つめながら困惑の表情を露にした。
普通、あそこまで執着心を露にしていると自分の気持ちに気付くようなものだがそんな様子がロイにはない。
いや、もしかして気付いているが同時に無意識にそれを否定しているのかもしれない。
何せ、相手の性別は男。
否定したくもなるだろう。
しかし、無意識に否定はしているがあの少年の澄んだ琥珀色の瞳、太陽のように眩しい金色(こんじき)の髪。
そして、その何物にも染まらない強い意志にロイはその想いとは裏腹に惹かれているのだろうとハボックは思った。
現にロイだけではなくこの司令部にいる大半の人間はエドワードの事を気に掛けている。
それを知っているハボックは何とも言いようもない複雑な気持ちだ。





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