その日のうちに真明から鳥を飼っても良いという許可が出た。
少年はなにやら嬉しくて、聞いた途端、真明に抱きついてしまう。
小さな頃から、少年はこの真明と、樹紀にとても愛されて育ってきた所為か、少々甘えん坊である。
だが父や母からしてみれば、そこが一番可愛いところだと言えよう。

「おぉ、いいぞ。その代わり、一つ、頼みごとを聞いてくれるか?」

真明が少年を膝の上に載せて言った。

「なに?父様…」

可愛らしく、真明を見上げて問う少年にやはり、愛しさがこみ上げるがそれと同時に起こる胸の苦しさや悲しみを輝く少年の笑顔は、より一層深くする。
まるで傷口に、冷や水を当てられたような、ヒリヒリとした感触が胸にあった。
しかし、真明は笑って少年を見る。

「もし、小鳥が逃げた時は追いかけずに、その小鳥の帰る場所へ返してあげなさい。わかったね?」
「はい、父様!でも、あの子は俺から逃げないんだ、父様。だから大丈夫」

にんまりと笑う笑顔が、真明を見上げた。
黒い、漆黒とも呼べる眸の奥には紫水晶のような光が見える。
真明は少年を抱きしめた。


「なぁ、雅明。いつまでも変わらぬお前でいてくれよ。」



******

《何とも、優しき御方よ。》

小鳥は少年に向かって礼を言う。
少し低めの声はこの美しき小鳥から発せられているものではない気がしてくるが、確実的に小鳥は喋っていた。

「いいよ、ボクも友達欲しかったし…ね?」

少女のような容姿の少年は、小鳥を掌に乗せ、座布団の上に乗せる。
手を座布団に近づけると、小鳥はピョンと小さく飛び跳ねて座布団に着地した。
やはり、可愛い仕草をする小鳥をみて、少年は笑顔になった。

「これからも、よろしく…」

はにかんだ様な笑みを小鳥は受け止める。
そして呟いた。
黄昏色の瞳の奥に決心したような炎をともらせて。

《主…私はいつでも主と共に。――例え、主が主で無くても。》

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