ヘタリア短編

□*鶴のお節介
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「誰にも渡さない
……スコーンのことだよ馬鹿」

…では何故私の腕を掴んだのだろうか。
否、掴んで“いる”のだろうか。

その言葉の裏にどのような意味があるのかなど微塵も考えやしなかったというのに、
そしてその言葉に対し何も言っていないというのに、
何故訂正した。(妙に早口でしたね)

そして目の前で赤くなっているあたりが全くもって不可解だ。(スコーン愛好家?)


……何故このような状態に陥ってしまったのか、しばし頭を整理してみようと思う。
私は只、下校中だったはず。
いや、違う。
下校中にとても大切な忘れ物をしていたことに気づき、取りに戻ったのだ。
陽はすでに大きく傾いており、窓から照らす夕日がやけに眩しい。
急がなくては。
私は走り出した。
誰もいない廊下は寂莫としていて、足音が響き渡った。

息が上がってしまったため、歩いていたら…

いきなりこの状況である。
全くもって、意味不明。


この人はわざわざ私に
スコーン渡さない宣言をしに来たとでもいうのだろうか。

しかも、この人は、確か……

「アーサー・カークランド」

口からこぼれたのは、とても小さな声だった。

「なっ!?」

(…どうやらこの人は、とても耳が良いらしい。)

「…?」

あまり目を合わせないようにと、斜め下あたりを見ていたけれど、
間が気になったのでつい顔を上げてしまった。(…あ)

尋常じゃない位驚いた顔が視界に入ったかと思うと
急に方に掴みかかってきた(!)

「お、おおおおおま、お前!俺の名前を知っているのか!!?」
「え、はい。」

知らない人のほうが、少ないのではないだろうか。
何せ目の前にいるこの人は、彼の有名な元ヤンだ。
バイオレンス。デンジャラス。

(…だから早く、ここから去りたい。少しだけ面倒。)

そして、吃り過ぎ。

「あの、肩、痛い…」
余りにも肩を強くつかまれたものだから、つい言ってしまった。
「あ、悪ィ」
短くそう言って、素早く離してくれた。

「そ、そうか…知ってんのか……」

離れた後も、一人であたふたしながらブツブツと何かを呟いている。
(…なんだか、楽しそうですね。)

「では、私はそろそろ」
「え、あ、あぁ」

軽く会釈をし、その場を去ろうとしたら

「あ、えとっ!」

こちらに向かって何かを言ってきたので、思わず振り返った。
「(…干支?)」
「肩、悪かった、な」
「……いえ」

……意外と、律儀な人なのだろうか。
(それでもやっぱり、)
(ここを去りたい)

まだ何か言いたげな表情だったけれど、構わず走り出した。

(待っていろ、私の折り鶴)


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