ヘタリア短編

□*交番のおにーさん
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制服姿のまま、行く当ても無く歩いていた。
さらに言えばここはド田舎。暇をつぶす場所さえない。

家に帰ったってきっと誰も居ない。若しくは母と愛人がいるだけだ。
無論、私の父ではない。それに、まだ“家に帰ってはいけない時間”だ。
だから、テストの日は余計に最悪だった。学校に居座り続けるは、先生がいろいろ聞いてくるので嫌だ。だから取り敢えず学校の外へ出たものの……

腹立たしく思う気力さえなくて、それでも目の前に転がる石だけは、妙に忌々しかった。思い切り蹴飛ばそうとしたけれど、肝心な気力が無くて結局蹴らずじまいで横を通り過ぎてしまった。何件かの家の横を通り過ぎると、無防備に陽の光に照らされて、思わず顔を顰めた。鬱陶しい程に眩しくて、何故だか鼻の奥がつんとした。


「あ、なまえちゃんやーん!」

その声に顔を上げると、少し離れたところでブンブンと大きく手を振る人影が見えた。無駄に満面の笑みを浮かべているのだと、遠目でもわかった。
あれは……

「交番の、お兄さん」
「あん時は世話なったなぁ!ホンマ助かったで」
「……、いえ、」

いつの間にか、当たり前の様に隣に並んで、愛想のいい笑顔で礼を言って来た。
私は目線を地面に落とし、ぶっきら棒な声で言った。別に、わざとそんな言い方になったんじゃない。ずっと口を開いていなかったから、たぶん、その所為。
もしかすると、嫌な気分にさせちゃったかもしれない。
そっと気付かれないように、上目づかいで窺ってみると、交番のお兄さんは相変わらず口角を上げていた。鼻歌でも歌いだしそうな表情。……いつもそうなのかな?よくわからないけれど、怒らせてしまっていないようで、安心した。

「それにしてももう12時半か。早いなぁ。」

ふわあ、と欠伸をする。

「時間ってホンマにたつの早いよなあ。俺かてなまえちゃんぐらいちっさかったんに、いつの間にか二十歳超えてもーたし。な?」

な?って言われても……困る。私はまだ中学生だし。
それでも、何となく、嬉しかった。何故だかわからない。
でも、このお兄さんの隣にいると、なんていうか、安心する、のかもしれない。
今だけは、私を締め付けるものが力を緩めてくれる。

「私服、ですね」
「そうそう!今日俺休みやねん!御蔭で昼まで寝てもうたわ」

そう言って、交番のお兄さんは伸びをした。

「そういえばなまえちゃんは、今帰り?」

その言葉に、思わずこめかみの力が入った。チクリと心臓が痛む。
別に、帰っている訳ではない。かと言って、上手く誤魔化す言葉が見当たらなかった。

口ごもるなまえを見て、トーニョは目を細めた。苦しそうに、少しだけ眉をひそめる。


「なぁ、なまえちゃん―――」


にこりと微笑んで、なまえの頭を撫でた。
なまえは驚いて、目を見開いた。

「よかったら、一緒に俺ん家で鍋せぇへん?」
「―――え?」

思わず、顔を上げた。
フレンドリー、というか、何と言うか、
でも普通、誘うだろうか。
別に厭だとか、そういう訳ではないけれど……

じっと見ていると、交番のお兄さんは慌てて両手を振った。

「あ、いや!怪しい意味ちゃうで!変な意味ではないし」

「鍋せぇへん?」という言葉に怪しいも変もない気がする。
別に訝しんでいる訳ではないので(交番のお兄さんだし)うん、うん、と頷いていると、安心したように胸を撫で下ろしていた。

「ほら、前言ってた俺の子分覚えてる?ロヴィーノって言うあの高校生の―――」
「……あぁ、はい」
「そいつが突然鍋食いたい言い出すから、取り敢えず買ってみたものの――そうそう、今丁度買い物の帰りやねん――でな、2人じゃ淋しいやん?あ、でもフェリちゃんも誘うから3人なんやけど……その、ダメ、かな」

フルフルと首を振ってこたえると、交番のお兄さんの表情が一気に華やいだ。
なんだかそんな反応をされると、頬が熱くなってしまうから苦手だ。
嫌じゃ、ないけど。

「そうそう!フェリちゃんって言うのはな、ロヴィの弟で―――」

楽しそうに次々と説明するお兄さんの言葉に、ずっと耳を傾けていた。よくしゃべるな、と思わず頬が緩む。正直「ロヴィーノ」という名前は初耳だった気がするけど、もしかすると忘れただけかもしれないし、黙っておこう。

不意に視線を上げた時、目の前にサッカーボールが転がってきた。
見渡せば、少し離れた公園に、小学生くらいの男の子たちが居た。交番のお兄さんはそれに気付くと大きく手を振って、思い切りボールをそちらに蹴った。
ボールは力強く、それでいて綺麗な放物線を描いて、公園の方に飛んで行った。見事に目の前に落ちたボールを見て、男の子たちが凄い凄いとはしゃいで歓声が起こった。




青空と、無邪気な子供たちの声。



隣を見上げれば、
眩しくて、素直で、まっすぐな 笑顔。


その笑顔に、トクリと胸が鳴った。

まるで、凍えきった心臓に温かいお湯を注ぐような。



暖かい。



でもそれと同時に、



少し苦しい。




大人になる戸惑い、大人への偏見、大人への疑念、大人への猜疑心……

そういったものが胸を支配していた。大人と子供を完全に切り離し、大人に向けて顔をしかめ後ずさっていた。信用できないと、睨みつけていた。



―――だけど、




目の前にいる、この人を見ていると
大人とか、子供とか、そんなもの関係ないのだと、そう思った。
少年よりも、未成年の私よりも、無邪気に笑う彼の姿は、純粋で、素朴で―――
見えない何かに恐怖して、固く目を瞑っていた私は本当に只の馬鹿だ。
だって、ほら

「あかん!もうこんな時間や!なまえちゃん、走ろう!」
「―――え、ぅわっ!」

目を開けるとそこは、何もない。
ただ青空と太陽が、輝いているだけなのだから。




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いつか書いてみたかった複雑中学生と
明るい交番のお兄さんな親分。

やるせない子と健全な人の組み合わせバンザーイ


一歩間違えばロリコンという危険な香りが
するんだけど―――


いいんじゃないかな!!!\(^o^)/(笑)


勝手な偏見だけど親分ってロリコンな
かほりがしないこともない気がする。

……やだ何それ悶え―――ゲフンゲフン

すみません自重します

  
 

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