ヘタリア短編
□ghost
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こんなに感慨深くなることを、
私は未だに解せないでいる。
私はそっと上半身を起こし、隣で寝ているなまえを覗き込んだ。
月明かりに照らされた肌は、驚く程青白く感じた。
長い睫は緩やかな曲線を描いて、閉じた瞼を縁取っている。
きっと、
きっと二度と起きない臨終のときも
この寝顔と寸分と変わらないのではないか。
不意にそんな考えが浮上する。
途端に、私の無くて良い心臓が締め付けられた。
―――厭な習性だと思う。
死を味わう筈がない故に、死について考えてしまうのだろうか。
……違う。これは見え透いた嘘だ。
私は誰が死のうとどこかで誰かが息を引き取ろうと関係ないのだ。言ってしまえば、すぐそこに血だまりがあったとしても、私の心は何も感じない。冷たい?そんなものだ。
だから、違う。
本当は、
なまえにずっと側に居てほしいから
永久にあなたの声を聞いていたいから
そんなことを思うのだ。
そう結論付けては、また一人、鼻の奥がつんとする。
本当に、厭な習性だと思う。
私はそっと、なまえの首に顔を埋める。
暖かい。
柔らかに感じる、生命の鼓動。
心地よい呼吸が、耳を撫でる。
あぁ、生きている―――
そう感じた時、初めて
私の生命は燻るのだ。
その証として頬を伝う涙を、なまえの頬に落とす。そして、まるであなたの瞳から流れ出たかのように錯覚しては、その光景を、脳裏に焼き付ける。
一種の信仰のように
繋ぎとめる糸のように
繋がった証とでも誇示するように
その涙を、そしてあなたの表情を
ただじっと、見つめる。
厭な習性だと、言われるのだろう。
でも私は、
其れの為だけに生き、願い、祈り、
それがすべてだと、
跪いて
死んでしまいたい。