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□それでも幸せだったよ
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「俺、好きな人出来た…。」

うん、知ってた。わかってた。彼のこと、目で追っていたよね。気づいちゃった、気づきたくなかった。見てみぬフリをしていた。

「うん、これで終わりだね。」

寂しいとかそんな生易しい感情ではない、もっと表現できないドロドロした気持ち。風丸くんには言わないよ?だって、言ったところでどうにもならないし、そして、これは僕の 我儘だから。彼を困らせることはもうしたくない。ここまで僕と一緒に居てくれただけで僕は幸せだった…。

「ごめん、ごめん吹雪…。」

彼は泣く。こっちこそ、付き合わせてごめんね?言い出すのも辛かったよね?君と少しでも長く一緒に歩いていたかった、気付いていないフリをしていてごめん。結果、悲しませることになって…。

「ありがとう。君と過ごした時間はかけがえのないものだった。」

最後に泣きじゃくる彼を抱きしめた。そう、これで最後…。僕の目からも涙が止まらない。風丸くんの泣き虫が移っちゃったのかな??

「…吹雪、好きだった。」

だった…。過去形表現。ごめんね、僕は君のこと幸せにしてあげられたかな?どうでもいいか、これからは彼と幸せを作っていくんでしょ?

「うん…、幸せになってね?」

本当にありがとう、君があの人のことを好きになる、これは必然だったのかな?うん、割り切ろう。僕はこれから別の幸せを見つけよう。でも、最後にこれだけは言わせて?

「風丸くん、僕はとっても幸せだったよ。」

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