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□僕と一緒に夢を見てみない?
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授業が終わり、昼食時間。

僕はいつもどおり、彼女の半田と屋上に上り、いつもどおり、他愛ない会話を勤しみながら昼食を食べる。平和過ぎないかな...?僕にとってこの生温い時間を過ごすのが実は苦痛である。
いやいや、平和だってことはいいこと、だよね。別に半田と一緒に昼食を食べるのだって、嫌いじゃない、むしろ最高。でも、このなんの変哲もない日常が僕は嫌い。
生きていること、実感しない。ゲームや漫画の主人公は何か目的に向かって努力してそれを充実している。僕らが今、普通に過ごしてるこの状況。勉強したって、ヒーローになれる?魔法が使える?そんな非科学的なもの、と切り捨てられ夢も希望も何もブチ壊れて。

この惑星じゃない別の惑星にはそういう夢が容易く叶えることができるとこがあるかもしれないじゃん!!!誰もがみんな、夢を見るんだ。事前に無理だと結論付けて僕らの未来を奪っている、そんな世界つまらないでしょ。

僕は、弁当に夢中の半端くんに聞いてみた。

「ねぇ、半田は今生きてて楽しい?」
「え...?」

彼の反応は妥当だ。まぁ、急にこんなこと聞かれたら、戸惑うよね。彼は弁当を床に置き、うーん、と唸る。そして、

「楽しいよ、今は。」

僕の目をじっと見てゆっくり答えた。少し引っ掛かるのが"今は"という言葉。でも、楽しいのか、僕はこの上なくつまらない世界だと思っているからそれに同意はしない。適当にフーンと相槌を打つ。

「マックスは楽しくないんでしょ?」

僕は素直にうん、と頷く。半田と一緒にいて、こうやって話して、サッカーして、笑って...。すんごく幸せ、でもね、満足は出来ない、というか足りないんだよねぇ。

「やっぱりな。いつも適当にやりきるところとか、飽きっぽいところとか、見てたら分かるぜ?半端な俺でも。」
「うん、なんかこの世界、面白味が湧かない。何かこの世でやったことの無いような新しいことをしたい。でも人間の限度とか、そーゆーの?あてつけられて、何もかもが無駄な気がして。気が引けるっていうのかな?」

あ、ちょっと暗い話になっちゃったね、ゴメン、と謝ると彼はキョトンとした顔で

「何で、マックス謝んの?」

と少し不機嫌になる。

「いや、気分とか悪くしなかった?」
「うん、全く。というより、やっとマックスに近づけたような。少しでも好きな人の考えてることとか、ほら、知りたい...じゃん?」

彼の意外な回答に僕は驚かされた。ポジティブ思考というか、単にバカというか。彼はほんの僅かに顔を赤らめ、俯く。半田、可愛いー!!!とちょっかいを出すと、うるさい見んな、と手で顔を隠してしまう。

「マックスはさ、」

と話を切り出す半田。僕は、何だろう、と耳を傾ける。

「自由に生きて、色んなこと経験したいんだろ?何にも縛られず、囚われず。出来ない、なんて決めつけるのが嫌いで。なら、納得がいくまで何度も自分に出来る程度で挑戦すればいいと思う。」

唖然とした表情で聞いていた。いつもバカだバカだと思っていたやつが、こうも意外な一面を見せたんだ。なんだか、むず痒くなって照れ隠し。

「半端くんに言われるなんて...」
「ちょ、台無し。は・ん・だ!!!」

僕はここまで彼に理解されてるとは思っていなくて、しかもまさか君に助言をもらうなんてね...。僕は心の中で笑う。

僕の心の足りない何か、君なら埋めてくれるのかもね。

大切な大切な僕の恋人──。


(もう少し大人になったら...僕と自由に旅しない?)

(あぁ!!!なにそれ超楽しそう!!!)

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