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□like?love?
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付き合い始めて一ヶ月。彼の事が沢山わかった。彼の好きな食べ物はもちろん、嫌いな食べ物や好きな曲、休日の過ごし方とかたくさん。何か考え事をしているとき下唇をペロリと舐める癖...とか、ね///
こんなにも彼の事を知れて、俺は幸せだ。でも、やっぱり彼はまだ俺の事、恋人としてみていないみたい。よく話すようになったし、登下校も途中まで一緒だから少しは期待してもいいかな?とか思ってた自分が恥ずかしいや。
ま、そう簡単にはいかないよな、人生。

今日も部活動と言う名目で部員総出で、メイド喫茶に向かう。この部に入り立ての頃はこの活動にひどく反対だったな。サッカーをするためにこの部へ入ったのに、と。
部長曰く、チームメイトだけではなく地域の幅広い方々との交流のためだとかなんとか延々と語られて俺が折れたっけ。
今ではメイド喫茶に偏見も嫌気もない。メイドさんとも仲良くなれたし、他校のサッカー部の情報も流してくれて実に充実している。

扉をくぐると、お帰りなさいませ、御主人様方、と毎度お馴染みのセリフ。ピンクと白のリボンでふんわりと巻かれたような可愛らしいテーブルに案内される。後ろ姿で顔は見えなかったが髪が長くて、下の方がカールがかった美しいメイドだった。今まで見たことないので、新人さんかな?とりあえず、可愛らしいメニュー名のココアを頼んだ。ここに来ると決まって俺はこれを頼む。実は甘いものとか好物なんだ。

「明井戸様、心此処にあらずですね?」

急に声をかけられ肩が震えた。俺の頼んだココアが来たみたいだ。顔は上げず、ども、と一礼。温かいココアを頼んだので、火傷をしないよう、息をふぅふぅ吹いてから一口。

「甘い...」
「ココアがお好きなんですか?」
「俺、甘いの大好きなんだぁー...え?」

メイドさんにニッコリ笑いかけるとそこにいたのは俺の見知った人物だった。

「れ、おん?」
「ん。当たり。」

な、なな!?何でここにいるんだ?俺は軽くパニックを起こした。だって、メイド服を着たレオンが俺の前で営業スマイルを浮かべて立ってるんだよ!!!?
もう、何て言えば良いのやら...。唖然としている俺に説明してくれた。

レオンはもう3年だから部活引退したらしい。俺を待っている間、暇だからバイトでもしようかと、探していたら、この店を見つけたそうな。ルックスが良いからという理由で事務とメイドの両方を受け持っているらしい。
でも、ちょっと水くさいかも。バイトの事も引退のことも何も聞いてないや。まぁ、まだ付き合って、知り合って一ヶ月だし、仕方ないっちゃあ仕方ない。けーどー、うー、あー。

「あけいど?もしかして、怒ってる?」
「べ、別に気にしてないよ!!」
「あけいどのこと、もっと知りたかったんだ。学校ではどんなことしてるんだろ?とか。ほら、今俺、あけいどの事また一つわかった!!!」
「?」
「あけいどの好物はー、甘いもの、だろ?」
「ッ///」

彼の方から一方的に話しかけてくれるのは初めてで、思っていたより俺の事考えてくれてて。最後はいつもの綺麗な笑顔を見せてくれた。
顔が赤くなっているであろう。顔を上げづらい。

「あけいど...?フフ、何、顔赤くしてるの?」
「〜ッ///」

俺が必死に隠しているのを覗き込んで、笑う。可愛いよ、あけいど。なんてメイド服を着たやつに言われるのは、なんか変な感じする。でも、そのギャップになのか、ときめいてしまった俺がいる。
そんな彼が俺に近づく。顔と顔の距離が近づくにつれ、心臓の鼓動がドクドクと早くなる。

「俺色に染まったか?」

耳元でトーンを落とした、男の人の声で囁かれた。息がかかってこそばゆい。そして、またフフフ、と笑い、期待した?と意地悪な顔。
そんな彼の顔の虜になったように彼から目を離せなかった。

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