short

□これでお前と、サヨナラだ。
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何事もない平凡な日常を壊すもの。それは移動教室の帰りに告げられた。

「あ、そうだ。僕、染岡くんのことが好きなんだぁ」

俺の中で一瞬時が止まった───

吹雪が雷門に転校してきてから俺と彼は共に行動することが多くなった。
彼が白恋中に居た頃、俺にスピードを教えてくれた彼を、尊敬の眼差しで見ていた、そう思っていた。でも、俺がダークエンペラーズに堕ちたとき彼は俺を支えてくれ、理解してくれた。その時彼のことが吹雪のことが好きなんだって気付いた。尊敬ではなく、ただただ一緒にいて欲しいと。

───そんな彼から、告げられた言葉は俺の心を壊す。

吹雪からすれば俺のことは親友として見ているだろう。まぁ、それが当たり前だけどさ...。

「あ、あぁ。俺は応援するよ。」

上手く言えたか、笑えたか。
誤魔化せたか?吹雪を、俺の心を。
彼は俺の方に振り向き、ニッコリと笑い言う。ありがとう、と。
その言葉は嬉しいが聞きたくなかったもので。本当に好きなんだな、彼を笑顔にすることが出来る染岡が羨ましくて妬ましい。

教室に入り、席に着く。俺はボーッと次の授業の準備を始める。そこに吹雪が走ってきて、

「風丸くん、お弁当だよ!!!」

そう俺に微笑んで言う。
すっかり忘れてたよ、と言えば、風丸くん大丈夫?と逆に心配させてしまう。俺は吹雪の頭を撫で、平気な素振りで屋上へと向かう。
屋上へ行くと珍しく円堂、半田、マックス、鬼道、豪炎寺、そして染岡が居た。
いつもは吹雪と2人で食べていたが、さっきの出来事を思いだし、

「吹雪、円堂たちと食べないか?」

吹雪は顔を朱に染め、え?良いのかな?と戸惑う。俺はそんな吹雪の手を取って、円堂と染岡の間に入り込み、一緒していいか?と問う。もちろんみんなはいいぜっと返してくれる。

「にしても、2人は仲いいな」

急な円堂の言葉に俺が、え?と聞き返すと

「だって、手ぇ繋いでんじゃん。」

しまった、と俺は思い離そうとする。だって、こんなところをみた染岡に勘違いされたら吹雪が悲しむだろう?俺としては離したくないけど吹雪のことを考えると、だ。

「いや、これはさっき、引っ張ったときに...」
「だって僕達、仲良しだもん。」

俺は口をパクパクさせながら吹雪を見る。吹雪は、違う?と俺の手を離すまいと少し強く握りしめてきた。
違わない...と小さめの声でそういった。染岡のほうをチラッと見ると彼は俺の視線に気づき

「吹雪のこと支えてやれよ」

なんて。一番言ってはいけない言葉を放った。俺は慌てて訂正を加えようとする。

「フフ、風丸くん支えてね。」

吹雪がそれを遮る。俺の頭は余計混乱した。吹雪は染岡のこと好きなんだろ?なんで笑っていられるんだ?嫌じゃないのか?誤解をされて、お前を意識してくれないんだろ?いいのか...吹雪?

「風丸くんのお弁当は中なにー?」
「え?えーと、卵と昨日の残りかな?」

そんな他愛のない会話がつづく。染岡と話すこともなく、結局ほとんど2人で話していた。
みんなは次が体育らしく俺と吹雪が屋上に残る。

「なんで染岡と話さなかったんだ?」

疑問に思っていたことをぶつける。

「フフ、なんでだろぉ...ね?」
「あのなぁ、──え?」

折角のチャンスを...といいかけたところで彼の顔を見た。彼は顔を歪ませ泣きそうな顔をしていた。

「ふ、ぶき?」
「エヘ、ごめんね。僕、何だか今頭の中混乱してて。染岡くんよりも...いや、なんでもない。」
「俺、そんなに吹雪が悩んでいたって知らなくて、ただ俺は吹雪と話せて嬉しいって...応援するとか言っておいて、結局、自分を優先にしてごめんな。」
「か、ぜまるくん?//」

俺は吹雪に謝り、彼を包む。こんなに小さいのに俺よりも心が強くて憧れる。そして、決意した───

「吹雪、俺に出来ることがあれば何でも言っていいからなっ」
「え?でもッ」
「お前は気づいてないかもしれない、けど俺はお前に以前、助けられた。俺もお前が悩んでいたら助けたい、泣いていたらその涙を俺が止めてあげたいんだ。」

そう、自分よりも彼を。大切な人を守るためなら、なんでもできる。それが喩え自分を苦しめる結果になったって...。
俺の気持ちは整った。

───彼を諦めようって。

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