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□第一印象、これ大事。
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何か…おかしい。多分、あの人に会ってから…。変なんだ、俺。

それはこの間のFF全国大会1回戦でのこと。
俺たち帝国イレブンは影山の支配を逃れ、本当のサッカーを始めることとなった。その1回戦。俺たちの本当のサッカーの始まりだ、と意気込んでいた。鬼道が足を負傷している。彼は責任感が強いから、俺も出る、と言ってくれたが、いつまでも彼に頼っていられないし、彼に無茶をさせたくないからみんなで断った。1回戦で負けるなんてありえない。それなりに俺たちも影山についていき、強さを身に付けていたのだから。

結果、世宇子は強かった。何で、俺たちは負けたのか。俺たちが弱かった?それはない。鬼道が出なかったから??違う、ただ、彼らが強かったんだ。俺たちは何もできないまま、病院へ搬送される。その時世宇子のキャプテンを見た、さぞ、勝ち誇った顔をしていることだろうと思っていたが、彼の顔はどこか悲しそうで、勝ったのに何故か苦しい顔をしていた。
世宇子のアフロディ…。
俺は目を瞑る。救急車のドアが閉まる。誰にも見られないように静かに泣いた。

目が覚めると病院のベッドの上。隣には源田が横になり、まだ目を覚まさない。俺は少し身体を起こす。身体の節々が痛い。ああ、世宇子に負けたんだった。不思議と嫌ではなかった。たぶん、彼の顔を見たから…。

「世宇子のアフロディ…。」
「僕が憎いかい?佐久間クン。」

僕がふと口にした言葉の人物がふっと現れる。俺は驚きを隠せなかった。彼が何故、ここにいるのか。彼は大きなフルーツバスケットを持って俺の前まで近づいてくる。

「なんで…?」
「何でって、お見舞いだけど…。」
「だから、何で俺なんかに」
「俺なんか??そんなこと言わないでよ。僕は佐久間クンの大ファンなんだけどなぁ。」

ファン?俺の??意味わからない。

「ねぇ、佐久間クン。痛い?」
「…痛いけど。」

何でそんなこと聞くんだよ。お前のチームのヤツが作った傷だろ?

「ごめんね、みんなも悪気があった訳じゃないんだ。あれの影響で…。」
「いや、別に謝る必要はない、試合だったから仕方ない…あれって?」
「優しいね、佐久間クン。うん、神のアクアのせいなのさ…」
「??」

全く話についていけなかった。それのせいでみんな病院送りになったということか?

「分かりやすく言うとドーピングだよ。」
「何でそんなことっ!!」
「分かってるよ、こんな勝ち方しても嬉しくないし、結果、佐久間クンも傷つけてしまった…。」
「アフロディ…?」

彼はまたあの時と同じ悲しい顔をした。一瞬だったが俺には見えた。そして、無理に笑う顔。俺はそんな顔を見ていられなかった。

「佐久間クン…?」
「ッ、なんでも、ない。今日は来てくれてありがとう…。あと、話もしてくれて。」
「うん、また、来てもいいかな?」

俺は何故か泣いていた。彼は敢えて何も触れなかった、そこに優しさを感じながら、うん、来て?と頷きながら彼の手を握る。彼の手はひんやりと冷たかった。

「じゃあ、早く治してね。ごめんね?」

そういって彼はこの病室を出ていった。俺は先程まで触れていた手を眺める。あの異様な冷たさ…ドーピングって大丈夫なのかな?身体を壊していっているのではないか??

「アフロディか…。次はいつ来るかな?」
「何だ、佐久間。アフロディに惹かれたのか??」
「げ、げげ、源田!? いつから起きていたんだ!??」

横から源田の声が。同じ病室だったのを今の今まで忘れていた。じゃ、じゃあ、

「聞いていたのか?」
「はは、まあな。お前が泣いてるとこも、アイツがお前を…っと、いや、とにかく。」
「??」
「アイツは今自分のサッカーを嫌っているみたいだな。」
「あ、ああ。」

そうだ、アフロディの言い方だと今のサッカーを辞めたい、改善したいと言う気持ちが伝わってくる。どうする気だろう、それより、なんでドーピングを?裏からの圧力か?神のアクア??一体それは…。疑問がたくさんある。
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