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□結ばれるまで...。
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彼を意識するようになったのはいつのころからだったか...。多分、出逢ったあのときから惹かれていた。

「風になろうよ」

彼が俺に向けて初めて口にした言葉。その言葉の意味は分からなかったが、何故かそれは俺の心に残ったもので。つい、復唱してしまう程だった。

「...風に?」

それだけではないかもしれない。彼のプレーを雪原のプリンスと皆がいうも納得できる。俺は、魅了された。雷門のみんなが吹雪のプレーに不満を持ったが俺は微塵も感じなかった。
彼の個人の力が高いのは分かった。それと同時に彼が独りだと言うことも分かった。少し似ている気がした。みんなといるのに何か一線を引いているみたいな、寂しい感じ。
練習が終わり白恋中の校舎に戻ると、彼が独りでご飯を食べているのが見えた。俺はすかさず声をかけた。

「吹雪、一緒してもいいか?」

彼は嫌な顔ひとつせず、逆に天使のような微笑みで俺を迎え入れる。

「風丸くん...だよね?一緒に食べてくれるの?嬉しい。」

俺の名前を覚えていてくれたことにも驚いたが、何よりその微笑みに釘付けになった。彼は風丸くん?と首をかしげて俺をみる。

「あ、ゴメン。つい見惚れてな。」
「え?」
「あ、いや、あの...///」

つい口を滑らせ動揺を隠せない、あたふたしていると、彼がニッコリ笑う。

「落ち着いて...まぁ、座りなよ。」

椅子を引いて座るよう促す。ありがとう、と小さく言って席につく。いざ、座ってみると思いの外、彼と距離が近く、顔が発火した。
なんだこれ、今日の俺は何か変だ。
自分でも異常であることには気付いたが、それほど考え込むことなくサラリと流した。
彼は手元にある料理を口に運ぶ。意外と一口が大きいんだ...男らしいな。外見からはあまり想像できない。

「風丸くんのイメージ...コロコロ変わるなぁ。」
「はい?」

急に話を振られ、あまり使わない敬語が飛び出す。俺は一体、彼にどんな印象を与えていたのだろうか、不安げに視線を向けると。

「最初は強気な女の子だと思った」
「女ぁ!?!?」
「も、勿論、男だよね?大丈夫、今は分かるよ」

落胆した...俺をみて焦って弁解をする吹雪。まぁ、女に間違えられることは多々あるが吹雪に言われるとなんか悔しい...。

「次はクールなのかな?とか思ったら仲間思いで熱かったり。」
「そ、そうかな?」
「うん、でも...また変わった。」
「次はなんだ?」

何だか期待を裏切っているようで申し訳ないが、最終的にどう思われているのか気になってきた。

「今はね、可愛いなって。」
「また、最初に戻るのか?なんか虚しいな。」
「いや、違くて!!!女の子だとか外見じゃなく内面的に、だよ。」

俺は料理を口に含みながら自暴自棄気味に聞いてみた。

「...何処が?」
「表情がたくさんあって、考えていることがすぐに顔に出るとことか。仕草?」

この短時間で、出会ってまだ1日だというのにこの観察力。すごいな、と感心した。良い意味での可愛いという表現だったのでそこは御咎め無しの方向で。

「吹雪って、よく俺のこと見てるんだな。なんか嬉しいぞ。」
「え、いや、そ、そうかな?」

最後の一口を食べて、小さく御馳走様、と両手を合わせ挨拶。彼のことを横目で見てみると誉められたことに対して照れているのだろうか、先程までの余裕な表情は無くなっていて。なんだか、俺のことは受け入れてくれているような気がして、つい口を滑らした。

「吹雪も良い顔してるよ!!俺も吹雪のことよくみるようにする」
「あ、本当?//ありがとう。」

ヤバイ、と思い彼の顔をもう一度伺うと彼は気づいた風ではなく、ただ純粋に喜んでいた。
結構、吹雪との距離が近づいた、と俺は思う。もっと、仲良くなりたい。一緒に話していたい。俺は聞いた。これからも一緒に食べていいか?彼の答えは簡単だった。勿論♪と。

多分、俺たちはもっと深い絆で結ばれる。それにはそう時間はかからないだろう。この食事が終わる頃、俺たちは自分の気持ちに気付いたのだから。

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