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□る ルージュの口紅*
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(照佐久 照美視点)

世宇子中は今、学校祭の真っ只中。辺りは美味しそうな焼きそばやたこ焼きのソースの臭いとワイワイとにぎやかな歓声で一杯。
他の学校からもウチの大々的な学園祭に足を運ぶ人も多い。
例えば雷門中の円堂くんや鬼道くん。イナズマジャパンの虎丸くん、豪炎寺くん、そして彼の妹さんとか。他にもたくさん見覚えのある顔がチラホラ窺える。
ちなみに僕の仕事は劇とクラスの喫茶店。僕の扱いは相変わらずで。

「照美くん美人〜。」
「やっぱりアフロディはこういうの似合うよな。」

ウェイトレス。ウェイターじゃないっていうね。女装...分かっていたさ。クラス展示は喫茶店。だから清楚なウェイトレスとウェイターで迎える落ち着いた雰囲気の場所にするっていうのが名目だったのになぁ。
そしてこれからもう一つ、クラスの劇が始まる。ウェイトレスの姿から、脇役なのにも関わらずフリフリのドレスを着て、化粧まで施すものだから気合いが入っている。一吹き香水を振りかけられ、噎せかえる。そして女の子が仕上げに、と言って真っ赤な口紅を出した。
女装自体が別に嫌って訳じゃないんだけどね。時と場合ってあるよね。

「うわ、照美...」
「さ、佐久間クン...いらっしゃい」

嫌じゃないんだけど、自分の恋人に見られるってどうなの?

「可愛い、でしょ?」
「まあ...いいんじゃないか。否定はしない。」
「うん、否定して欲しかったな。」

喫茶の衣装を着て...これから始まる劇の衣装を着て。彼には女役をすることも喫茶でウェイトレスをすることも言ってなかったから彼の方が少し恥ずかしかったみたい。

「俺、そういう趣味ない。」
「言っとくけど、僕もないからねっ!!!」

何を言っても疑いの目で見る彼。いつもこんな扱いだけど今日はやけに冷たい。折角、学校祭だから呼んだのに...かえって嫌われたらと思うと頭が一杯一杯で。ああもう。

「とりあえずさ、劇は頑張れよ?見てるから。」

それでも柔らかく笑ってくれる彼。

「ホント?じゃあ頑張る。」

───劇は大成功に終わった。

「なぁ、照美。」
「何...?」
「女装はなんとなく想像ついていたけど...そんなに化粧なんてして」

女みたいだ、と彼は言った。元々女顔だから化粧映えすると回りの女子が言っていたなぁ。そんなにも女みたいかなあ?

「変?」
「そういう訳じゃなくて。劇もお前にばかり目が行くし、綺麗だったし...」

彼が必死でつい笑ってしまう。彼に綺麗とか言われるのには抵抗がないみたいで...彼の言葉が素直に心に落ちた。

「だけどっ!!!」
「ん?」
「金輪際、女装とかやめろよ。俺だけの照美じゃん。なんかみんなに注目されてて人気者の照美は嫌だ。別人みたいで、遠い。」

少し僕よりも小さな身体で精一杯抱きしめてくる。これを抱きしめ返していいのか、さ迷う手。

「みんなに照美とられるじゃんかぁ。」

肩に寄りかかる頭をそっと撫でてみた。嫌がられていない。彼が抱きしめ返せよ、と膨れている様子。ちょっと我儘な子供みたい。今までこんなに弱い彼を見たことがないし、甘えてくる彼も初めてだ。

「女装も悪くないよ?」
「何でだよ...」

まだ、むすっとしている彼にそっと口付けをした。彼の口には真っ赤なルージュの口紅が跡を残した。

「このルージュの口紅は佐久間クンのために塗ったんだ。恥ずかしい思いさせちゃったかな?ごめんね、これで許してくれるかい?」
ちょっとおフザケが過ぎたようで抱きしめていた腕を解いて思いきり突き放したかと思えば、ジャッジスルーを一発浴びせられた。

佐久間クン...ファールだよぉ。

彼の照れ隠しからいつもの強気で偉そうな彼に戻った。腕を組んで散々僕に毒舌を吐いた後。

「照美、次。」

手を引っ張って学祭の店回りをしようと歩き出す。

「何か食べたいの?」
「たこ焼き。」
「それなら平良のお店が美味しいよ。」

仕事が終わったら付き合うって約束だったね。でも、これ着替えなくてもいいのかなぁ?あと、

口紅付いてるんだよ?

僕の唇だけでなく佐久間クンのにも。

だから、僕達がキスしたことバレちゃうよね?

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