title 2''

□わ 解らないのが恋の道*
1ページ/1ページ


貴方は知っていますか?こんな話を。何てことはない、日常。部活のワンシーン、と言えるほど貴重なものではなかった。初めは。僕はこんな話を知ってます。主人公はとても不幸な少年。つまり、僕です。自分で言うのもなんですけど、とても不幸だったのです。でも、安心してください。"だった"のでこの話はハッピーエンドを迎えます。最初はとても重たい話です。堪えて聞いていただけますか?

まずは先輩の話から。


速水視点


そして、こちらの話も参考に。

風丸視点


それでは僕の長い長いノロケ話を拝聴ください。


それは彼の行動により起きました。
僕はいつの間にか彼の腕の中にいて、きつく抱き締められていた。先輩は最初、遠慮がちに腕を回しました。でも...すいません。僕は知ってました。僕も先輩が好きだから。いつも僕の視界の先にいたのはあなたでした。風丸さんのこと好きだったはずなのに。意識してあなたから目を背けるようにしました。けど、あなたの声が聞こえただけであなたの姿を見かけるだけでふと笑顔が出てくるようになりました。こうしてあなたと話したのは...2人で話したのは初めてで平然を装うのは大変でした。あなたも僕のこと想っている。それを知ったのはだいぶ前。僕があなたを好きだと自覚したときでした。
視界の先のあなたとはいつの間にか目を合わせるようになった。きっと気付いていないのでしょう。目が合うとすぐに目を逸らす。やっぱりあなたが好きでした。周りが僕を"風丸大好き後輩"と呼び、そんな噂を流したのは最近。風丸さんはサッカー部へ行ってしまったが今では笑顔で送り出せる。きっと彼は憧れでした。みんなには彼が好きだと想わせておけばいい。僕の心から愛する人はたぶん違う。でも僕は今日、確信を得ました。

「俺、お前のことが」
「マッハー?」

貴方から告白を得る直前、僕の憧れの彼がそれを遮った。

「風丸さん!?」

名を呼ぶととても嬉しそうな顔をして

「お取り込み中、だったな」

と。僕の身体には彼の腕が回されていてそれをみて先輩はニコニコ笑っている。その事に気がつくと急に恥ずかしくなり、彼の腕を振りきってしまった。人に言われるとこんなにも動揺してしまう。だから必死に風丸さんに訂正を促す。
最初は風丸さんが沢山彼のことを教えてくれた。協力、してくれた。けど、今ではそんなに風丸さんを巻き込みたくない。自分から巻き込んでおいて酷いことかもしれない。
でも、他人にはきっと干渉してほしくないんだ。僕の気持ちも彼の気持ちも。風丸さんでさえ。そう、風丸さんも他人...なんだ。
彼が部室から出ていって少しの沈黙。僕はようやくわかった。はっきりとした本当の自分の気持ちが。ずっと不安だったんだ。僕は本気で先輩を愛せていたのだろうかと。先輩を代わりとしては見ていないだろうか。でも、違ったんだ。風丸さんには今の僕の気持ちもわかっていたのかもしれない。
どうしよう、先輩...マッハ先輩。
あなたが好きです。

僕は俯く彼の前に立って言葉を待った。しかし彼はずっと黙ったまま。僕はそっと彼に抱きついてみた。それこそ彼が先程したように。

"さっきの続きを聞かせてください"

あなたから愛の言葉が聞きたかった。好き?愛してる?どっちでもいい。あなたの口から本当の愛を聞かせて?

「つづき?」
「つづき、です。」
「何のこと?」

少し嫌な予感がした。

「ビビりましたか?」

挑発して見せると僕を宥めるように僕の腕を解き、両肩を叩いて彼は言った。

「宮坂が欲しいのはコレじゃないでしょ?」
「...え?」
「宮坂は風丸が好き」
「何、言ってるんですか」
「俺は、」

この後に続く台詞はきっと僕にとってとても耐えられないものだろう。耳を塞ぐことも出来ない僕に彼は言った。

「俺は風丸を一途に思う宮坂が好きだよ」

沈黙、それを破ろうと彼を呼んだがその言葉すら彼には届かなかった。

彼が適当な理由をつけてこの空間から出た。僕が手を伸ばしても彼は見なかった。扉が閉まっていくのを見て絶望した。彼にではなく自分に。自分が彼の気持ちを弄びすぎたこと。僕はどこかで保証していたのだろう。先輩の気持ちを...。風丸さんから聞いてた話からも先輩は僕のことを想っていてくれているって。
彼に僕は酷く映っているのだろう。彼自身が損在な扱いを受けている、と。

"風丸の予備"

そう自分を思っていたのかもしれない。

抑えきれず涙が伝う。ドアには曇りガラスが付いているから分かっちゃうんですよ?風丸さんと2人で何を話しているんですか?
僕の滑稽さを普及活動でもしてるんですか?なーんて、貴方はそんな人じゃないですよね。

ドアを見ると辛いから背を向けてみた。何もない壁すら恐怖の対象となった。

でも、この止まらない涙が僕をどんどん不安にさせていく。怖くて身体が震える。ドアに耳を突き立てる勇気もなくて、涙を止める根性もない。

弱い自分に嫌悪する...

その瞬間、後ろでドアが豪快に開いた。風丸さん?マッハ先輩?それとも他の部員?とりあえず泣き顔を近くにあったタオルで顔を覆い隠した。背中に暖かな温もりを感じた。そして、それが誰だかすぐに分かった。

「出ていったんじゃなかったんですか?」
「俺、お前にとって何かな...?」
「それを聞きに戻って来たんですか?バカですか?」
「...」
「僕には言ってくれなかったくせに。」

耳元でごめん、と小さく謝られた。だから、僕は彼に向き直し、いつも先輩がしてくれるようにそっと頭を撫でて宥めてみた。

「マッハ先輩が好きですよ。」

泣き顔だってホントは見せたくないし、無理した笑顔はもっと見せたくなかった。けど、彼の謝罪の言葉はとても低いトーンで先輩の方が泣いてしまうんじゃないかって思ったから。
彼の表情は僕の予想と違った。僕の言葉と彼が思っていたことも食い違っていたらしい。怪訝そうな顔をしてる。そしてみるみる顔が紅潮していき、冗談はよせ、とすぐ目の前にあった顔が遠退くのと同時に僕を包んでいた腕も解かれる。

「先輩は勘違いしてます。」
「は?」
「風丸さんのこと好きだって自分でも勘違いしてました。でも、この気持ちは勘違いじゃないんですよ?」
「宮坂...」
「好きです、マッハ先輩。」

僕は彼を追うように、やっぱり僕から飛び付いてあげた。先輩が頼りなくて情けなくてヘタれてるから仕方なく僕が。仕方なく、ですよ?

「宮坂、えっと...///」
「さっきみたいに腕絡めてもキツく抱きしめてもいいんですよ?」
「バカ。」
「っちょ、先輩。」
「今しようと思ってたの。」

ホントに世話のかかる先輩。何でこんな人を気に入ったんだか。

「宮坂、好きだ。」
「...ヘタレ。」

もう手遅れですよ。トキメキに気付いてしまったから。でも、彼と並んで歩けるなら...世話のかかるヘタレでもいいかな?

さて、僕のノロケ話は如何でしたか?今作品は三部構成になっております。お楽しみくださいましたか?またこういった構成を考えています。ご支援ください。拝聴ありがとうございました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ