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□星空
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「今日は星が綺麗だね、アツヤ。」
そういつものように俺に話しかけてくる。今日の特訓のこと、最近俺がよく出てくること、そして。
「あのね、今日も風丸くんはすごかったんだよ?やっぱり足が早くてカッコいいんだ。でも、最近ね、彼が可愛く見えるんだ。変かな?」
そう、最近兄ちゃんは風丸の話をよくする。
「あぁ、いつも見てるから知ってる。別に変じゃねぇよ?」
「そうかなぁ?」
「兄ちゃんは風丸のこと...好きなのか?」
そう問うと凄く優しい顔になり、
「多分...ね。」
と満天の夜空を見上げながら返す。
俺は知ってるよ。いつも兄ちゃんは彼を目で追ってる。最近、俺を出したがらないのも、彼の影響だろう。
「風丸くんはね、」
と話をし始める。
「いつも辛いことがあってもキャプテン達には大丈夫とか平気とか言ってて、陰では苦しいくらい凄い努力していてこれでもかって位自分を追い込ませるんだ...」
「...」
俺は兄ちゃんの話を黙って聞いた。
「僕ね、このままじゃ風丸くんが壊れちゃうんじゃないかって心配なんだ。...あれ?何で僕、泣いてんだろ?やっぱり僕変じゃない?」
「お前がそれだけ風丸のことを想っているってことだろ?」
「すんっ...そうなのかなぁ?」
「あぁ。」
俺は兄ちゃんが風丸に想いを告げない理由も知ってる。風丸が兄ちゃんのスピードに嫉妬していて話しかけていいのか、どうしていいのかわからないんだろう。
でも、俺は思う。
この2人は両想いで気持ちが擦れ違っていると。勘違いしているだけなのだと。
確かに風丸は最初このスピードに嫉妬していたのは事実。でも、それだけじゃなかった気がする。その後、嫉妬から尊敬、憧れ、そして好きと言う感情にまで導き出してしまった。
そんな風丸は端から見るとバレバレで気づいていないのは兄ちゃんくらい。
あーあ、報われないね。俺にはもう何も出来ないけど、せめて兄ちゃんと風丸だけは幸せにしてくれないか?
そう、例えば。
─この勘違いが
早く解けますように─
俺はこの星空のした、ひとつの星に願いを込めてみた。