short

□divine punishment
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あぁ...これは僕への天罰なのか?

─彼が見ている者は僕じゃない─
僕はFFで影山に支配され、神のアックアというドーピング的な行為をしてしまった。その力で勝ち上がり、人々を悲しませた。そう、彼も悲しませてしまった内の一人。
佐久間次郎。帝国学園でFWをやっていた。彼の眼帯、少し闇を纏った瞳、その全てに僕は惹かれ、彼に一目惚れをした。でも残念なことに彼には好きな人がいた。
鬼道有人。帝国学園でMFをしていた、天才ゲームメーカーと異名を持つ帝国の司令塔及びキャプテンだ。彼のサッカーセンスは並みじゃない。彼には人を惹き付けるような者がある。それは雷門中キャプテン円堂守とは少し違ったもの、それは、円堂守の持っていない闇。そう彼は闇しかなかった。その闇の部分に佐久間くんを惹き付ける何かがあったんだと僕は考える。
FF一回戦はその帝国学園との試合。鬼道有人はこの間の雷門中との試合で足を負傷しているらしい。これは僕の力を見せつけるチャンス...そう思った。でも、よくよく考えてみたらこれは自分の力じゃない。神のアックアがあってこそ使える力だ。僕はこの試合に勝った。圧勝だった。
気がつくと彼に傷を追わせていた。あれ?僕は点を取っただけなのに...傷をつけるようなことはしていないのに、彼は病院へ搬送された。

「総帥...何故、彼らは傷を負ったのですか?僕は点を、入れただけ...」

気づけば涙が頬を伝う。こんな力、必要ない...。彼を傷つける力なんていらない。

「アフロディ、お前は悪くない。アイツ等が弱かっただけだ。」

え?僕はその言葉を聞いてホッとしてしまった。罪悪感が薄れていき、先程まで息苦しかったものが僕から離れていく。
そう、鬼道が弱かった。あのチームが弱かった。佐久間くんを傷つけたのは彼らだ。
そして、僕は一番強い。神の力を手に入れた。

─僕こそが神!!!!─

そして思い知った。自分が目を逸らしてきたことは結局彼を傷つける結果となった。彼から鬼道有人は切り離し、力を求めて苦しみ、また影山に利用され、心に深い傷を作ってしまったのは僕だ...。彼とは帝国学園で再会した。彼は僕のことを覚えているらしく

「お前は...世宇子のアフロディ」

と、僕が雷門11に入っていたことに少し驚いていた。でも、僕はそんなことより彼の足の方へと視線を落とす。...これは、僕の作ってしまった罪。彼に負担をかけた。
帝国11+デスゾーン組との練習試合。これは新必殺技を編み出すためとかいう理由で設けられたもの。
試合中、彼はベンチでずっと試合をみていた、というよりは、帝国ユニフォームの鬼道を見ていた、といった方が正しいか。これぞ、僕への天罰。好きな人の瞳に映ることのできない苛立たしさ、歯痒さ。そして、ゴーグルの彼をみると余計自分が惨めになる。
練習試合も終わり、デスゾーン2の完成。そして、カオスという合同チームが現れ、明後日、試合を宣告。みんなは動揺したが、僕にとってはどうでもよくなっていた。

「佐久間くん...足、平気かい?」

聞いてみると少し困ったように笑い

「よくはなっているが、実は結構痛い。まぁ、自業自得だなッ」

と。みんなには言わないでな?と微笑む彼に僕は何も出来なかった。

「早く治って、本当の僕と試合をしてほしい。」

なんて格好のいい言葉を選び、並べる。彼は少し戸惑う。"本当"って...?という呟きが聞こえる。

「神のアックアに頼らない、本当の僕を見て、そして───。」

それを言うと彼は少し顔を紅くさせ

「考えておく。」

とぶっきらぼうにそう言った。僕は思っていたより会話できたこと、彼の未だ見たことのない一面を見れたこと、そして、その返答に顔が緩む。

そう、いつか

─僕の全てを知ってほしい...─
犯した罪も、君を苦しめた罰も、そして、堕ちた神の君への想いも。

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