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□おまじない
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「ねぇ、風丸くんは占いとかおまじないって信じる?」
「な、なんで?」

吹雪がヒロトと共に俺の席まで来たかと思うと、急にそんなことを聞いてくる。

「ほら朝のTV占いとか。」
「信じてるわけないだろ?」
「えー、風丸くんは信じる派だと思ってたけど、予想が外れちゃったね。」

予想?

「どんな予想してたんだ?」
「僕の予想はラッキーカラーの物を常に身に付けているとか。」
「俺は消しゴムに名前を書いて...とかかな?」
「!?」

ニヤリと笑いながらヒロトは俺を見る。改めてヒロトは怖いと認識した。
そう。ヒロトの予想は当たっていたのだ。

「あ、風丸くん今ドキッてしたぁー。」

そして吹雪にまでバレる。俺は慌てて訂正しようとするが、

「あれ?これって...」

ヒロトに筆箱を荒らされ、消しゴムを手に取ったかと思うと勢いよくカバーをとった。

「ひ、ヒロト?み、ちゃった?」

俺は戸惑いがちに聞いてみると、彼は消しゴムから目を離し、吹雪の方へと視線を向ける。

「ん?何?」

とキョトンとした顔でヒロトを見返す。彼は、なるほどね、と呟き俺を見る。

「グッドラック」

と親指を立てながらいったヒロト。逆になんか腹がたった。

「え?基山君見たの??」
「うん。バッチリさ。」
「教えて!!!」
「いいよ。」

な、何言ってんだ!?普通そこは俺たちの秘密ーとかで流せよ!!!

「ヒロト!?」
「フフ、冗談、冗談♪」

ビックリさせるなよ。ヒロトはフフッと笑いながら

「風丸くんってやっぱりおまじない、信じてるんだね?」

俺は開き直って、あぁそうだよ、と適当な相槌をする。

「あれ?そういえば消しゴムのおまじないって好きな人と結ばれるってやつだよね?」
「ん?うん。」

吹雪が何を言いたいのか分からなかったからとりあえず、肯定して話を進める。

「それって、風丸くんに好きな人がいるってこと?」
「そーだけど...あ。」
「あらあら。」

俺は流されるままに言ってしまった。いや、でも好きな人がいるってだけで、誰とまでは分からないよな?なら、まだマシだ。

「ふーん。風丸くんモテるもんね。その中に可愛い子くらいいるよね。」

少し今まで吹雪と違った。ヒロトの方を見ると彼も俺の方を見ていて、慌てて逸らされる。俺はよくわからず首をかしげていると、

「と、とにかく、風丸くんは信じる派だったね!!」

と明らか何かを隠そうとしている。

「吹雪?どうかしたのか?」
「ッ!!!な、なんでもないよ、風丸くん...アンケートに答えてくれてありがとね...」

いつもの吹雪には戻ったがドコか寂しそうな顔をしていた。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り2人とも自分の席に戻っていったようだ。
授業に集中出来なくなっていた。吹雪のあの寂しそうな顔が頭から離れない。
俺は何か傷つけるようなことでもしてしまったのではないか、あんな顔をさせたくない、見たくない。
ヒロトは何か知っているみたいだったし、昼休みにでも聞いてみようかな?

キーンコーンカーンコーン

昼休み始まりのチャイム。ヒロトは吹雪と一緒に教室を出ていく。俺もヒロトに用があるため後ろから追いかける。すると、屋上に向かったみたいだ。俺は屋上の扉をそっと開き外の様子を伺う。ヒロトなら知っているはず。

すると、

「風丸くんに、好きな人いたんだね...」
「うん。」
「ねぇ、教えて?」
「それはできない。」
「何で?僕が傷つくとか考えてる?風丸くんはどんな子が好きなんだろうっていつも考えてた。」
「(吹雪...え?どういうこと?)」
「風丸くんは女の子の方あんまり見ないからもしかしたら、僕でもまだチャンスがあるかもしれないって思ってたけど。風丸くんには好きな子がいて僕の入り込む隙なんてないんだね。」
「それは」
「それは違う!!!!!」
「風丸くん?」

吹雪が悲しんでいたのは俺のせいだったんだな。俺がおまじないなんかに頼らないで素直に気持ちを伝えればよかったんだ...。
俺は吹雪のほうまで走り込み、彼を抱き締めた。

「俺は吹雪が好きなんだよ?女に興味ないとかじゃなくて、吹雪しか好きになれないんだ。」
「か、かぜ、まるくん...」

吹雪は俺の方に手を置き、背伸びをし、唇を重ねた。これっておまじないのお陰か?今、すごく幸せだ。

「ふ、ぶき?え?」

吹雪はニヤリと笑いヒロトと並ぶ。ヒロトもクスクス笑いながら俺を見る。

え?な、なに?

「あー、やっぱ俺は天才だなぁ」
「ホント、ありがとう。基山君に感謝☆」
「ちょ、2人とも?」
「全部俺のシナリオ通りさ♪」
「風丸くん、僕の事好きなんだよね?」
「えっ??う、うん///」

急に何を言わせるんだ?

「じゃあこれで恋人同士!!!」
「?」
「実は俺、前から風丸くんの気持ち知ってたんだ。消しゴムの事も。」
「はぁ?」
「吹雪くんも風丸くんのこと好きだって前から言ってたから、これはくっつけるしかないなって♪」
「消しゴムに名前かいててくれたなんて僕、嬉しすぎて死にそう。」

俺一人展開についていけない、え。どういう...?

「全部、俺のおかげだよ?」

ヒロトが全部仕組んだってこと!?

「じゃ、じゃあ、俺がお前のところにいくのも...」
「計算の内。」
「あの瞬間、屋上での告白も...」
「計算の内。」

な、なんなんだよぉ。俺は床にヘタリと座り込む。
ヒロトは、まぁ、よかったじゃない?吹雪くんとラブラブ出来るんだよ?なんてニヤニヤした顔で言ってくる。
いや、それは嬉しいけどさ。チラッと吹雪の顔を見るとニコッと微笑んだ。

ヒロトの策略通りって言うのが気に食わない!!!

俺はその日以来、占いもおまじないも信じなくなった。

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