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□え 選ばれし花嫁*
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(一リカ リカ視点)

一本通りの違う教会から鐘の音がこの商店街にまで鳴り響く。

...結婚式かぁ、ええなぁ。

ウチは結局、あの恋以来相手は見つからないまま。かつてダーリンと呼んだ彼と一目惚れから始まった一方的な恋。
あれから10年...経ったんかなぁ?
バタフライドリーム、一緒にやりたかったわぁ、なんて。

「こんにちはー。」
「いらっしゃーい。」
「お好み焼き一枚ください。」

今ではサッカーから遠退いたお好み屋でお母ちゃんのお手伝い。今日もまたお客さん。出会いはお客さんしかないんかい。あぁ、こんなにも可愛いウチを放っておくなんて男はバカやなぁ。

「何ぃ?豚か?」
「うーん、じゃあ久しぶりにラブラブ焼きでも戴こうかな?」
「はぁ!!!?」

久しぶりにって?そう思い視線をあげると、なんや見た顔やなぁ、と認識した後。

「あああああーっ!!!」

とつい大声を出してしまう。お客さんもお母ちゃんもいなかったから2人だけの空間が出来上がっていて。

「ひ、久しぶりやなぁ...。元気してたん?ダーリ...一之瀬ぇ。」
「好きに呼んでいいよ。」
「じゃあ、ダーリン。」
「うん、君らしいよ。」

久しぶりのダーリン。声も前より大人っぽくなっていて背も高くてまるで別人。アメリカでの活躍はちゃんと聞いている。搭子が気を遣って情報をくれる。ウチが思ってる以上に頑張ってるんやろなぁ、モテモテなんやろなぁ。
そんなアンタがこんなけったいな店に何の用ですかー?っちゅうね。

「今さら何なん?」
「おーっ怖!」

おどけた喋り方はあの頃から変わらへんなぁ。嫌いじゃないよ?けどなぁ──。

「ラブラブ焼きは売り切れですぅー。」

えっそうなの!と驚いた顔してカウンターに身を寄せる。

「だから、はい。豚玉でも持って帰りー。」
「じゃあ、リカはもう相手がいるの?」
「それはなんちゅー嫌みですかぁー?いたらこんな店やっとらんわ。」

ウチはカウンター内の椅子を引っ張り出し座る。立ち商売は疲れるねん、はよ帰ってよ。

「じゃあ、ラブラブ焼き作ってよ。」
「ダーリン、それどういう意味?ウチは軽い女じゃない。」
「なら、まだ俺のこと好きだよね?」

何でこの人はいつも自信に満ちているんだろう。ここで断ってしまいたい。
─あの頃、ウチを散々避けていたくせに何?ウチのこと好きなん?アメリカにも勝手に行ったくせに。秋には伝えてウチには一言も言わなかったやんか。

「好きだったら何?結婚でもしてくれるんか?」
「うん。」
「はいぃ?」
「まだそれは早いけど、いずれ結婚しようよ」

何それ。ナニコレ。ワケわからんわ。ウチは秋ちゃうで。

「秋のことが好きなんちゃうん?」
「そんなこと言った?俺が好きなのはリカだけだよ?」
「嘘やん。ウチ、そんなこと一回も言われてへん」
「言ってないもの。」

なんちゅー、いい加減。不覚にも好きと言う言葉にときめくウチ。アホちゃう?あーもう、こういう時どうしていいんか分からんわー。

「ずっと言えなくてゴメン。正直、自分でも分からなかったんだ。リカの言う通り、ずっと秋のことが好きなんだって思い込んでたけど、」
「ダーリン、」
「そう、その"ダーリン"がないと駄目なんだ、俺。」

嘘ばっかし。ウチがいないと駄目?そんな男ちゃうかったやん。騙されへんぞ。

「はいはい、一之瀬さんは嘘がお上手ですね。」
「もしかして、まだ信じていない?」
「あったりまえやん。好きなら10年も放っておくか?」
「そうだね。でも、知ってる?10年前の今日だよ。俺等が出会ったのって。」
「嘘ぉ〜?」

もう、俺のことそんなに嘘つきにしたいの?なんて言われて疑いすぎたことに少し反省。少しな?

「でも、だから何なん。」
「俺もねちゃんと反省してるよ。リカを一人で空回りさせたの。」
「う、うっさいわ!!!//」
「だからね、今日君にもう相手がいたら諦めようと思った。」
「じゃあ、それを信じるとするわ。せやけどな、分かってるんか?ウチでホントにええのん?」
「いいよ。」

そういって彼はカウンターに身を乗りだしウチにキスをした。

「な、何してんねんっ!!!///」
「え?駄目?」
「駄目とかの問題ちゃう...」
「リカ、遅れちゃってゴメンね。今ならちゃんと分かるんだ。」

──リカが俺の未来の花嫁だよ──

そういってまた口付けをする。
彼がホントにウチのこと好きだ、なんて夢みたいやん。花嫁、か。ええなあ。まぁ、天使が絡んだあの事件以来、花嫁なんか懲り懲りや、と思っとったけど。
あぁー、夢なら覚めへんで...ウチ、今一番幸せやから。

教会の鐘の音が響く商店街。

ソースやらマヨネーズやらの匂いの中。そんな中でキスなんてムードも何もあらへん。少しもカッコつかへんけど、相手がこんなにもカッコええんや。勘弁したるか!!!

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