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□ぷ プレゼントはキス*
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速水視点もどうぞ。

(速←宮 吹←風 風丸視点。)

中間地点というものがいかに難しい立場であるか分かった。
俺と親友と後輩。俺はその2人の間で板挟みにされている。親友は後輩が好きで、周りではその後輩が俺の事を好きだという噂がたっていて。ややこしいことだ。

「どうしたの?風丸くん。元気ないね?」
「吹雪...」
「何なら聞かせてよ。少しは力になれるかも、ね?」

俺はコイツのことが好きだ。きっとコイツは自覚してるんだろう。よく絡んでくる。俺も宮坂に同じようなことをしているのかな。でも宮坂、本当は俺のことを見ていないんだろ?本当はアイツのこと気になってるんだろう。言いたくても第三者であり中間にいる俺がしゃしゃり出るのは違うと思った。

「風丸、くん?」
「あ、いや。何でもないから。」
「...それならよかった。」

彼が目を閉じてフワリと背景に花が出るように笑う。そう見えているのは俺だけなんだろう。ついつい見入ってしまう。

「吹雪、あのさ」
「んー?」
「あー...サンキューな!」

宮坂もマッハも素直じゃないけど俺も相当だよなぁ。陰ながらでもサポートしてやるか。

───

「俺、好きな人できた。男だけど...。」
「えぇ!!!?風丸、好きな人出来たの?」
「え、そこ?」
「男だっていいじゃん。良かったなぁ。サッカー部か?」
「あ、うん、まあ。小さくて、ちょっと影があるけど、とっても優しいやつなんだ。」
「宮坂じゃ、ダメなのか?」

彼が随分ストレートに尋ねてくるからどう答えたもんかと俺は目を泳がせた。

「宮坂と俺は関係ないだろう?」
「そうだな。変なこと聞いたな。」
「いいよ。それより、お前の方こそ」
「俺?」
「えーと、いや、何でもない。」

少しは感じていた。コイツが無自覚なんじゃないかと。それでいて俺とのことを気にしている、と。まぁ、時間の問題かな。

───

「風丸さん!!!」

次は宮坂。自分のやっていることはお節介だと言われるかもしれないな。けど、これは俺の問題でもあるから早く解決したい。

「風丸さん、さっきマッハ先輩と何話していたんですか?」
「気になるのか?」
「ですかねー...?」

宮坂は俺をチラッと見ると不安そうにそう呟く。何となくでしか分からないけど、宮坂の方が手っ取り早そうだ。

「宮坂の話してたよ。」
「嘘、マッハ先輩が...僕のこと?そっかぁ...!」

目に光が入り込むのが分かる。俺も吹雪と話すときはこんな顔をしているのだろうか?きっと宮坂と違って俺は素直じゃないから無邪気さも明るさもなく話しているんだろう。

「ありがとうございます!!!風丸さん。僕を気にかけてくれて。」

何のことだ?と惚けて見せても彼には通用しなかった。笑顔をこちらに向けて何度も礼を言う。必死に言うものだから頭を撫でてやった。

「風丸さんは、憧れ、なんですよね。」

また小さい呟きが聞こえたが聞こえないフリをした。自分で気付いてほしいから。

───

さて、あとはマッハが気付いて宮坂に自信がつけば一件落着かな?
と呑気に考えていたらつい陸上部の部室に足を運んでしまう。

いけない、いけない。
ついつい戻ってきたくなる場所なんだよな。
この場所はもう俺の居場所じゃないんだよなぁ。

染々と陸上部の頃を思い返していると、この部室にやってくる部員の姿が見えた。俺はまた戻ってきたと勘違いされることを避けるべく部室の裏に隠れた。その部員は宮坂だった。そして後ろからマッハの姿が。部室の中は2人きりになった。扉に耳を当てて状況を窺うことにした。なんか話しているみたいだけどよく聞き取れない。
そして、中が無音になった。やばい、マッハの話題が尽きたのか!?それは窮地。進展しない。俺も困る展開だ。それこそ避けねばならぬ事態。俺は勢いよく戸を開けてマッハの名を呼ぶ。

「マッハー?」

目の前に飛び込んできたのは2人が何ともなあ仲睦まじく抱き合っている姿だった。余計なお世話どころかお邪魔虫じゃないか。俺はそんな自分にため息を吐き、2人を散々煽り立てて適当に出てきた。扉の前から少し離れたところでしゃがみこみ、もう一度長いため息を吐く。自分のしたことを反省して、立ち去ろうとしたら宮坂の大きな声が聞こえた。挑発したような口調で何か言っている。マッハの言葉が聞こえた。聞きたくなかった言葉。それは宮坂も同じであろう。

「俺は風丸を一途に思う宮坂が好きだよ」

最悪。マッハじゃなく俺。俺が出ていって邪魔したから彼の不安を煽ってしまったんだ。どうしようか。宮坂の叫ぶようなマッハを呼ぶ声が聞こえた。マッハが出てきたところ鉢合わせる。
立ち聞きしていた俺は趣味が悪いらしい。彼から本音を突きつけられたのは初めてだった。

「風丸は宮坂の気持ち、」
「知ってたよ、でもそれは宮坂も同じ。」

よく分からないといった表情だった。

「俺が宮坂の気持ち気付いて無視してることも気付いてる。そして自分も好かれてるのを無視してる。まぁ、板挟みってやつだな。」

彼は憤ったように声を荒げた。

「マッハはやっぱり優しいね。優しいからこそ─その優しさで傷つけてしまうんだね、他人も自分さえも...──」

そんな嫌味を言ったせいか彼は黙り込んでしまう。少し心が痛いけど続けた。

「勘違いはいけないよ、マッハ。何事も確かめてから。」
「?」
「宮坂がそんなやつに見えるか?乗り替えるやつじゃないだろう?一途、なんだろう?もう一度、聞いてきたらどうだ。」
「風丸...」
「部室に独りぼっちにさせられて、先輩と関係を悪くしたって考え込んでいるかもしれない。早く行ってこいよ。」

彼は泣きそうな顔をしてまた中へ入っていった。もう、立ち聞きはしない。趣味が悪いらしいから。

「風丸くんッ!探したよ。無断で練習サボるんだもの。キャプテンが心配してるよ。」
「あー、はいはい。謝っておくよ。」
「ちなみに、僕もすごぉーく心配したんだよ?」
「、ごめん。」

小さい身体のわりに声には大きな圧がかかっていて、ありがとう、と余裕ぶることが出来ずつい謝罪の言葉が出た。
でも、心配してもらえたのはやっぱり嬉しかった。

「風丸くんは人のためなら悪役になるんだね」
「え?」
「君も優しすぎるよ。」
「吹雪?」

彼は背伸びをしてそっとキスをした。

「なっ!!!//」
「お疲れ、風丸くん。」
「お前、今!!!」
「やっぱり、もうしないかな。」
「?」
「背伸びしてキスとか、屈辱的じゃない?」

それは俺を馬鹿にしているのだろうか。それとも彼なりの意地なのだろうか。

ともかく、素敵な報酬をありがとう。

そして、2人が今度こそ上手くいくことを願いつつ俺は俺たちの居場所へ戻っていった。



宮坂視点

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