長編小説
□第一話 はじまり
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第一話 はじまり
「銀ちゃあ〜ん!!暇アル。どっか連れてけヨ。」
「あぁ?だめだ、俺は今忙しいんだよ?超忙しいの。ガキに付き合ってる暇ないの。だから一人で遊んでこいよ。」
「…苺牛乳飲みながら、ジャンプ読んでゴロゴロしてる奴が暇じゃないわけないアル。
めんどくさがってんじゃねーヨ、クソ天パ。」
「あァ?天パの何が悪ィんだよ!?天然パーマに悪い奴いないよ?
それに俺だって好きでクルクルしてるわけじゃねーんだよ!!
…ハァ、もういいから一人で遊んでこいよ。俺ジャンプ読むんだからよ。」
どうやら動く気はないらしい。ならば、動かせばいい。力ではなく言葉で。
「…もういいアル。
ヅラのとこに行って、んまい棒貰ってくるネ。
あっ、マヨに酢昆布奢ってもらうのもいいアルなぁ〜。」
ピクッ
バタンッ
「あァ〜…その、なんだ…。ジャンプ読み終わっちまったなぁ〜。やることねーなぁ。
あれ?神楽ちゃんも暇そうだね?暇だよね?
銀さんもさぁ、暇になっちゃったんだよね。
つーことでさ、散歩でも行きます?
…ついでに酢昆布1個なら奢ってやってもいーけど?」
ほら、大成功。
銀時という男はなんせ素直じゃない。素直じゃないくせに、面倒くさい男だ。
その理由の一つ、独占欲の強いところだ。
私が他の男の名前を口にするのは嫌がるし、会うなんてことはもってのほかである。
それなのに、自分は勝手に出かけるし、女と一緒にいたりする。
夜だって、ふらっと出かけて夜中に帰ってくる、なんて勝手な男だ。
「…最初からそう言えばいいアル。」
「おい、行くのか?
行かねーのか?」
「行く!!行くアル!!」
「だいたいよォ〜、銀さん、いつも脇が酸っぱくなるほど言ってんだろ?
男はみんな狼さんだって。獣なんだよォ?
爽やかな奴だって、優しい奴だって、み〜んな狼さんなんだよ?
ヅラとか多串君や総一郎君だって、みんなケダモノなんだよ?
頭ン中アレしか考えてないんだから、アレしか。
だから、銀さん以外の男に近付いちゃダメなの。分かった?」
「マジでか!?みんな狼だったアルか!!
じゃあ銀ちゃんは狼にならないアルか?」
「えっいや、その……」
−…俺だって狼さんだよォォォ!?だって男の子だもん。健全たる男の子だもん、仕方なくね!?
けど俺頑張ってんじゃん。狼さんになってないじゃん。我慢してんじゃん。
「ほら、アレだよアレ。銀さんアレだから。
うん、アレだし。」
「アレアレばっかじゃ意味分かんないアル。」
「だから、ほら…」
「キャーーーッ!!!!」
「うわァァァァァァ!!!!」
「「ッ!!!!」」
「今の声何アルか!?」
「近いな、すぐそこか。
ったく、何の騒ぎだか。」
「…銀ちゃん、なんだか嫌な予感がするネ。
すごく、すごく……。」
ザッ…
「!!…神楽ァ、お前先帰ってろ。」
「ッ!!銀ちゃ…」
「どうやらお客さんが来たみたいだからよォ。」
お客さんって?
ハッ、まさか!!
振り向いたその先には、妖しい笑みを浮かべた奴が立っていた。