長編小説
□第四話 別れの時
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第四話 別れの時
あれからどのくらい走ったか、神楽はひたすら走った。もちろん行く当てもないが、とにかく自分に関わるすべての人から遠ざかろうと、人気のないところまで走り続けた。
「ハァ…ハァ…ッ、
…あっ!」
ザザッ
ずっと走り続けて足がもつれ、転んでしまった。ふと周りを見ると、知らない町だった。人気もなく、静かだ。そして、今いる場所は橋のど真ん中。
「ここは…」
どこだろう、と考えようとしていた時、
「ここは俺が支配している町だ。誰もいやしねェ。
やっぱりお前から来ると思っていた。ククッ。
仲間になる決心はついたか?」
「た、高杉!!
お前のせいでみんなが、みんなが傷付いたアル!!
お前のせいで…ッ!!」
「…それがお前の答えか?なら、話は終わりだな。
残念だったなァ。」
案外サッと簡単引いた高杉だったが、次の言葉がまた神楽にとっては残酷だった。
「じゃあ、銀時やお前の仲間は殺しに行く。
それがお前の出した結果だ。クククッ。」
「ッ!!ちょっ、ちょっと待つアル!
な、仲間に…ならない、とは言ってない…。
仲間に…仲間になれば、銀ちゃんや新八、アネゴやかぶき町のみんなには、手を出さないアルか?」
「フッ。俺ァ、嘘はつかねェ。嘘は嫌いだからな。」
「じゃあ、約束するアル。
仲間になるから、その代わり手を出さないと。
でないと…」
「俺はそれでいい。
これでお前は俺の仲間だ。
ついてこい、俺にな。」
「…ッ」
「おいおい、そう睨むな。
俺だって鬼じゃない。
何も言わずに俺の元へ来たら、銀時の奴が誤解するだろ。俺がお前を拐った、とな。だから…最後に会わせてやる。別れの挨拶をさせてやるって言ってるんだ。」
「余計なお世話アル!
別に挨拶なんて…!」
「まだお前を完全に信用した訳じゃない。だから、本当に俺の仲間になるのか確かめてやるって言ってるんだ。ククッ。」
「!!!」
鬼じゃないと言っておきながらも、やはりこの男は残酷な奴だった。いや、冷酷というべきか。
別れが言えないからこそ、黙ってこんなところへきた神楽にとっては、1番酷なことだ。