長編小説
□第八話 それぞれの気持ち
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第八話 それぞれの思い
話は少しさかのぼる。
真選組に夜兎の捕獲命令が出た日の夜、
車の中では沈黙が続いていた。
土方side―
イライラする。
正しいことをするのが警察である真選組のモットーだった。
町を護る、人を護る、社会のルールを護る。
そして、大事なモンを護るのが俺達の役目のはず。
なのに、1番護りたくて1番大事なモンを護れない奴が警察って…笑えるな。
チャイナが高杉と組んでいるなんて思わない。アイツはこっち側の人間だ。
第一そんなの万事屋達が引き留めるはずだ。
早く確認しに行かねェと。
一刻も早く確かめに行きたいのに、こんな時に限って信号に引っかかる。
「…クソッ!」
「土方さん、らしくねェんじゃないですか?」
「あァ!?」
助手席の方に目をやると、沖田は目を閉じ、腕を組んでいた。
「いつも冷静な土方さんが、感情的でらしくねェって言ったんでさァ。」
「なっ!!
俺は…冷静だ。」
「そうですかィ?なら別に。
けど、何か勘違いしてやせんか?」
「…何がだ。言ってみろ。」
「“自分だけがこんなに苦しい思いをしてる”って思ってるんじゃねェですか?」
「ッ!!」
「“なんでチャイナを捕まえなきゃなんねェんだ”とか“チャイナを護ってやれねェ”とか思ってるんじゃないんですかィ?」
「総悟、お前ッ!!」
赤信号から青に変わる。
後方車からクラクションが鳴らされる。
「信号、青になりましたぜィ。」
「クッ!!」
グッとアクセルを踏みこむ。
もう万事屋まではすぐだった。
それまでお互いまた沈黙が続いた。
「…着いたぞ。」
「土方さん、さっきの話なんですがね…俺もそう思ってまさァ。
だから土方さんだけじゃないですぜィ?」
「総悟…。」
「とりあえず、旦那に確認してみやしょう。」
「フッ。そうだな、行くか。」
普段は決して意見なんか合わねーが、今回は仕方ないようだ。
惚れた女が重なっちまったんだからよ。